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敷徳「原田さんは知ってたんですか?茜と一夫の関係を」 原田「数年前の事だけど流産した事は打ち明けられてたよ。でも相手は知らなかった」
茜は崩れ落ちるようにうずくまり、表情も虚ろな状態だった。 烏丸「口からの出血…まあ今のは私が悪かったよ。 ただ彼女が静かになってくれたお陰で、ようやく雪村兄弟の事件の話になるか。」 みちると原田は睨み、ほとんどが烏丸の言動に呆然とする中、敷徳は質問する。 敷徳「烏丸さん…本当にどうしたんですか? 本来のあなたはこんな…」 烏丸「はあ…本来って、ワクチン接種からようやく元に戻って来たのに… 君はあんな平和主義者が良いのか…私はただ事件解決の為に、邪魔者に罰を与えているだけだよ…太郎君。」(編集済)
敷徳「それが貴方の本性か」 烏丸「ええ、私は邪魔者を蹴散らしながら今の地位を築きましたから。まぁ話を進めましょう。敷徳さんは加奈さんの両親は、現在何処にいると考えます?」 敷徳「会わせたくない理由を考えると、山中組の対立関係にある組に居るんじゃないかなと」
熊野「それも相当の大物だ。組長クラスのな」 熊野は県警に連絡してタケルに聞いてもらう事にした。
烏丸「先ほど、加奈さんのご両親は若い男女だと紗矢さんは言っていましたが?」 敷徳「紗矢さんの発言はあなたとの関係性を考えると、まだ不明瞭な面も一部あります。」 熊野「今電話が来たがタケルからは、子供関係だったら脅迫の材料に使われるがその記憶は無いと。」 烏丸「空振りでしたね、もう行方不明で良いのでは?」 軽くあざ笑うかのように告げる烏丸に、敷徳はある人物の方向を見ていた。 敷徳「牧子さん、あなたの口から言ってくれませんか、加奈さんの本当のご両親の事を…」 熊野「そうだ加奈さんと一番近しい存在であり、裏社会にも精通しているあんたなら。」 牧子「ごめんなさい…加奈をこれ以上傷つける事になるから言えないわ…それに…」 烏丸「どうしたんですか、あなたらしくないですよ柿沢さん? ならば僕からのヒントです…これは海外でシクトク病の研究を行う著名な研究者から聴いたのですが。 シクトク病はこれまでの症例だけではなく、親から遺伝する場合もある。 これは1割にも満たないが、海外からの症例の報告は数件はあったと。」(編集済)
敷徳「加奈さんの両親が感染者だったとして生きる事が出来る仕事は?踊りだしたら仕事にならないでしょうに」 烏丸「あります。研究所の実験体としてなら」 熊野「当然、非合法だろうな。裏社会の」 (編集済)
敷徳「すみません、仮説ですが事件のまとめを少ししても良いですか? まず正次さんは加奈さんに実の親に会わせようとした結果、村ぐるみで殺害されたと思います。」 烏丸は敷徳の話に頷く。 敷徳「一夫さんはそれを知り、村の膿を吐き出す行動に出た…協力者の貴方と共に。 しかし、貴方は一夫さんを利用した。」 烏丸「ならば、利用した理由は?」 敷徳は加奈への贖罪を感じつつ、烏丸に告げる。 敷徳「これは外れて欲しいのですが…僕は加奈さんの父親は烏丸さん…貴方だと思っています。」(編集済)
烏丸「面白い。しかし変ですね。私が父親なら只の画家である私に、殺してまで会わせたくない理由なんてあるのですか?」 (編集済)
敷徳「貴方と加奈さんが親子だと発覚した場合、シクトク病の改善やワクチンがもっと早く作られた可能性があります。」 烏丸「まあ、レアケースですからね…それが真実の場合は。」 敷徳「シク村長は再会した場合、自分達の悪行を知られたくない・儲ける手段が無くなる恐れから止めたかったと思います。」 烏丸「なるほど…うん、何だみちる?」 みちる「ねえ…貴方の日記に[水曜は元の自分に戻る…戻りたくない]これ記憶障害の影響と思って触れなかったけど…別の理由があるの? 茜さんを監禁した日も水曜だから…」(編集済)
烏丸「理由なんてないよ。水曜日に原田兄妹が家を訪ね、茜が夜に家に侵入するなんて予想出来るわけない。単に本来の人格が嫌なんだろ」(編集済)
みちる「本来の人格…でも私に取っては別人格である烏丸一郎を愛していたの。 温和でのんびり屋だけど、芯が強く優しかったあの人を…ねえ一郎さんの日記の続きはどこにやったの? 一夫さんの亡くなった水曜から内容の一部が取り外されていた…答えてよ、貴方なら知っているでしょ。」 みちるは涙をこらえる中、烏丸は彼女を蔑んで語りだす。 烏丸「ろくな教育も受けていない…捨て子が余計な事や妄想を色々と… こっちに取っては記憶障害だけではなく、[あいつ]が目覚めた事でどれだけの負担を受けてきたか… お前の記憶を混乱させる為に、【久志吐の花】と似た効能を持つ、星形の灰色の花も仕入れたのに。」 敷徳「みちるさん…この男は僕たちの知っている烏丸先生ではありません…日記の続きは必ず探します。」 敷徳の問いかけにみちるは頷き、熊野は彼女に同行した。 敷徳「自分から二重人格だと告白したとはいえ…烏丸、あんたはどれだけの人を…」 烏丸「呼び捨て…面白くなって来たね、じゃあ改めて話の続きをしようか太郎君。」(編集済)
烏丸「私が加奈の父親なら母親は誰です?」 敷徳「それを語るには、そもそも貴方たち夫婦が何故村から逃げたかを考察しなければなりません。娘が感染者だからだけでは足りません。それなら子供を売ればいいのですから。おそらく逃げたのではなく誘われたのです。山中組と対抗する組織に。加奈さんの母親はその組織にいるはず」 (編集済)
烏丸「母親に関しては…ならば私が夫と考えた場合、妻を見捨てた愚か者と見ている訳か。」 敷徳「ただ…僕の中のもう一つの仮説も聴いて貰ってもいいですか?」 烏丸「ああ、聴かせてくれ。」 敷徳「加奈さんの携帯に、貴子と柿沢牧子のやり取りが送られた事は覚えてますよね?」 烏丸「あの画像か。」 敷徳「それに関して、ログの一部は本物だと判明されました。 そのログの個所は貴子の死体偽装、施設の職員のリストの抹消です。」 烏丸の表情が一瞬曇るが、敷徳は続ける。 敷徳「僕が気になったのは、施設の職員の方のリストの抹消理由です。 その理由が施設の職員の一人は、加奈さんの母親であり、既に殺されているとしたら。 柿沢牧子がそれに同意したのは、加奈さんにその真実を知って欲しくない事を考えると。 貴方と柿沢牧子の敵対関係は芝居…紗矢さんも含めた、あなた達の動機は…この村の復讐では?」 烏丸「シクトク病や村の輩どもに人生を狂わされた者達による…芝居か…」(編集済)
敷徳「シク村長たちが私利私欲ではなく村の発展に花を使ってればと悔やまれます」 二夫「それにしても施設って言うとまたも館長が一枚噛んでるのか」 (編集済)
敷徳「二夫さん、どうかしたんですか?」 二夫「すみません、お二人が気になったので。」 烏丸「できれば二人でもう少し話がしたいのだが…太郎君、移動しようか?」 二夫「あの茜さんの件で、原田さんに殴られた事に関してですが。」 敷徳「ああ…あれは完全に僕が悪かった、それにしても元アスリートのは強烈だったな。」 二夫「でも…原田さんの時ってもしかして、わざと受けたんですか…」 烏丸「君の妄想だろ…太郎君、少しだけ別室に移動しよう。」 二夫を無視する形で烏丸は移動しようとするが、二夫は語る。 二夫「でも…烏丸さんは以前記憶が戻っても、良いことは無いといってましたよね? それって…本当のあなたは、後悔の念の強いからじゃ…」 烏丸「君は何が言いたいんだ…あと君が今持っている写真…それは…」 二夫「牧子さんが烏丸さんに渡してくれと…烏丸さん、この人は誰ですか?」 30年前に取られたその写真は、幸せそうに微笑む若い頃の烏丸とみちるそっくりの女性が写っていた。(編集済)
敷徳「まさか、加奈の母はみちるの母か??!」 二夫「それじゃ加奈とみちるは姉妹になりますよ。烏丸は自分の娘と再婚した事になる」 敷徳「加奈の母はみちるの母の姉妹といったところか。それなら加奈とみちるは従姉妹だ。烏丸さん、説明してください」           (編集済)
烏丸「はあ、偽装写真をいくつ持っているんだ…あの人は。」 烏丸は呆れながら、ある写真を見せた。 そこには先ほどの写真に、加奈に似た女性と若い青年もいた。 烏丸「先ほどの写真はこの写真の一部、みちる似の女性と青年がみちるの両親だ。 そして加奈に似ている女性は…私の妻だ。」 敷徳「嘘だ…僕は加奈さんをこれ以上傷つけたくないのに…何でこんな事ばかり…」 牧子「烏丸さんの言う通りよ。」 二夫「牧子さん?」 烏丸「そうですね…みちるが私の妻でなく養子だという事も話すべきか。」(編集済)
敷徳「二人は夫婦でしょうが」 烏丸「戸籍上はみちるは私の養子です。みちるは売られて転々としますが、最終的に私の元に。友人であるみちるの両親に頼まれてね」 二夫「子供を自ら売るような奴らが改心したのか?」 烏丸「みちるの両親は事業に失敗し借金まみれでした。闇社会から借りた金もあり、みちるを側に置く方が危険だったんです」 (編集済)
烏丸「まあ元々その借金は両親が作った物ですが、この村の老人たちは…本当に。」 牧子「落ち着きなさい、私はいつあなたが暴れるか不安だったんだから…」 敷徳「あの事件を解決したいなら、こんな事をしなくても…」 敷徳が設問する中、烏丸は語る。 烏丸「私達も悪行を止めらなかったから罪人と同じ、それだったら憎まれた方が楽だろう…」 ?「失礼します…」 牧子「あら、あなたも来てくれたのね紗矢さん。」 紗矢「はい…あの敷徳さん、二夫さん…私達の行動や知る限りの事件の真相を話しますので、お願いがあります。 その際に真由子、加奈さん、みちるさん…そして雷太は別の場所に移動させてくれませんか?」 正次さんの事件・一夫さんの事件は、彼等には知られたくない部分も多いので…」(編集済)
敷徳「正直に話してくれるならば」 紗矢「ありがとうございます」 真由子、加奈、みちる、雷太は別室に警官と共に移動した。 熊野「もし嘘だと判断したら詐欺罪で逮捕するからな」 紗矢「ええ。隠し事は一切致しません」 (編集済)
熊野「それと紗矢さん、雷太君の衣服の血は鶏で間違いありませんでした。 彼は旅館の新メニュー考案の為に、養鶏場にいた様です。」 紗矢「そうですか、雷太ごめんなさい…」 紗矢から後悔の念を強く感じさせる。 熊野「あと…唯さんの事件に関して、貴子から唯さんを必死に助け出そうとするあなたを目撃したと…ならばどうして…」 紗矢「亡くなる前に、真由子から星の形をした灰色の花を見たと…唯ちゃんと一緒に。 唯ちゃんの死後、館長からどっちが一緒にいたと言われ、私が見たと…真由子を守る為に…でも唯ちゃんを助けられなかった時点で…」 (編集済)
敷徳「紗矢さんは子供ながら精一杯やりましたよ。その後館長に命を狙われたんですか?」 紗矢「いいえ。私と唯は鬼ごっこしてたから唯と離れていたと誤魔化しました」 (編集済)
紗矢「でもその後、館長は村に来ては【久志吐の花】の事を言うんなら…真由子も俺の者にすると… 私は真由子や雷太、加奈さんを守る為なら、自分の人生を捨ててもいい覚悟で生きてきましたから…」 敷徳「紗矢さん…」 牧子「本当に…ろくでもない男よ…シク村長や与平と同じ位に卑劣な…」 二夫「そうですね…でも貴子が証言を言うのは珍しい感じですね?」 二夫は熊野に尋ねた。 熊野「ああ…最初は私は悪くない、全て村の呪い・牧子のせいだと繰り返したんだが… 貴文さんが憔悴していると告げたら、喋りだしてな。」 烏丸「憔悴か…私達が話をする際に、貴文君と桃香さんの意見も気になる。」 熊野「確かに彼らから見た視点での、正次さん及び一夫さんの事件の証言は必要ですね。 そうだ見張り付きの条件として、彼等も大広間に移動させましょうか。」 敷徳「(憔悴…まさかな…だが…)」(編集済)
警官が貴文と桃香を大広間に連れてきた。 貴文「なあ、早く終わりにしようぜ。もう疲れたよ・・・」 敷徳「ええ。そのためにお二人の証言も必要です。正次さんの事件についてですが・・・」(編集済)
桃香「証言って言われても、当時は私と貴文は紅琥村にいたんだけど。」 貴文「ああ…だが正次さんの事件の時って、俺達はシクトク村にいたよな…親父達の命令で。」 桃香「ちょっと何で不利になることを言うのよ」 貴文「早く終わらせたい、それだけだ…」 対照的な二人を敷徳は観察していた。 敷徳「(貴文の話は本当か…)」 紗矢「正次さんはシク村長側のやり方に反発していました、一方兄の正造さんは村長側で2人は対立関係だったんです。」(編集済)
敷徳「正次さんは正義感溢れる人だったんですね。ちなみにシクトク村に来るように命令されたのは、具体的にどんな要件ですか?命令と言うのは、ちょっとした要件じゃないですね」 貴文「正次さんが行方不明になったので皆で捜索しようとなったんです」 熊野「自分達で監禁して、自分たちで捜索だと。笑えるな」 桃香「監禁なんて証拠も何もないわ。貴方達の推理に過ぎないじゃない」 (編集済)
桃香「それに私は、別の所で貴子と一緒に子供の見張りを…あっ」 敷徳「見張り、どういうことですか?」 桃香「シク村長に言われたのよ…加奈や雷太の面倒を見ろって…言い間違いよ。」 桃香に焦りが見える中、紗矢が語る。 紗矢「私も探そうとしたら、お前は真由子と一緒にここにいろと言われたわ。」 桃香「そうよね、女子は子供を見る為に待機って。」 紗矢「閉じ込められました、私と真由子は。 雷太や加奈はと訪ねても、村の未来を考えるなら余計な事はするなと…正造に言われたんです。」(編集済)
熊野「その間にシク村長たちで正次を大樹に移動させたんだろう」 敷徳「これで目撃者はいないですもんね」(編集済)
貴文「俺や他の男どもは、本当にいなくなったから探せと言われたんだ。 亡くなった事には驚いたし、親父達は正次さんなのに正造さんが死んだって言い出すし…」 桃香「そうよ本当に知らなかったのよ、ただ見張った事をごまかしたのは…ごめんなさい。」 2人の態度に憤りを感じつつも、烏丸は冷淡に語る。 烏丸「私がこの村に来た時も、君達の親や村の者は似たようなことを言ったな。 玲奈の事を訪ねたら、失踪した・家出・そんな女は村にいないと…」 敷徳「あの玲奈って、もしかして…」 烏丸「ああ、玲奈は私の妻であり、加奈の母親だ。 すまないが…私がこの村に来たきっかけ、そして玲奈・みちるの両親について話してもいいかな。」(編集済)
烏丸「若手の新鋭画家として画壇の注目を集めてた頃、全国各地の田舎を巡って画を描いてました。シクトク村に来たのはそんな時です」
烏丸「私の情報を知っていたのか、シク村長は歓迎ムードで私を出迎えました。 ただ私はそれに対して、正直違和感を感じていました。 まるで以前もこの村にいた様な感覚と居心地の悪さを感じる中、私は一人農園に向かったんです。 玲奈とはその農園で出会い、彼女は私に対しても気さくに接してくれました。 私と彼女は同年代という事もあって話も弾んだのですが、ある音楽が聞こえ始めたんです。 その時に私の体は勝手に踊りだし、意識を失いました。」 烏丸は淡々としながらも言葉の一つ一つに、怒りの感情を抑えるのが感じられた。 貴文「親父のテストか…」 敷徳「貴文さん、テストというのは?」 貴文「親父の反対派は行方不明になるか、この村の縁を切る奴らがほとんどだった。 だが親父はこの村に来る人間が、その末裔かを調べる為にシクトク踊りを流すって悪趣味だよな…」 烏丸「目覚めた時には玲奈の他に、みちるの両親も傍にいました。 そして玲奈は言ったんです[この村から早く逃げてと…もうこれ以上人が死ぬのは見たくないと。]」(編集済)
烏丸「私は死にたくなかったので訳も分からず村を出ました。やがて村の事は忘れて画家として仕事に没頭していました」 敷徳「それで村との接点は無くなったはず」 (編集済)
烏丸「私が村を出る際に、みちるの両親が手伝ってくれたんです。 その際に何かあったらいつでも連絡をくれと、連絡先を渡してくれて… 私は村から出た後、仕事に没頭する気持ちと同時に強い後悔の念も引きずっていました。 玲奈は大丈夫だろうか、自分を逃がしてくれたみちるの両親は元気でやっているのかと。 連絡先にも電話をしましたが、何故か繋がらないままでした。」 桃香「・・・・・・」 みちるの両親の話が出た瞬間、桃香の表情が暗くなりつつある。 烏丸「それから半年後、私は美術関係の仕事後の帰宅途中、玲奈に似た女性を目撃したんです。 最初は雰囲気の違いから他人の空似かと思いましたが、声で彼女だと気づきました。 私は玲奈に問いかけた際、彼女はこういったんです[こんな姿見られたくなかった…でも生きていて良かったと。] 彼女はすぐ立ち去ろうとしましたが、私は彼女を呼び止め、あの時の謝罪をしたいと伝えたんです。 その後彼女から…ある事件によって彼女が村から逃げた事、みちるの両親の辛い状況を知りました。(編集済)
熊野「みちるの両親は事業に失敗したんだよな。電話は借金取りが怖くて出れんわな。玲奈の事件って言うのは何だ?」 烏丸「彼女の農園で出来た作物で食中毒が起きたんです」 二夫「冤罪の匂いがプンプンするな。シク村長達に嵌められたんじゃない?」 (編集済)
烏丸「食中毒が発生した原因は、餃子と言われています。 その餃子を販売していたのは、当時飲食店を経営していたみちるの両親です。 野菜は玲奈の農園の作物で…それ以降みちるの両親の店は経営難に陥り、農園も潰れました。 ただ…その事件が起こったのは唯さんの事件の2か月後だったんです。」 敷徳「それって玲奈さんとみちるさんの両親は、唯さんの事件を目撃した可能性も…」 桃香「どうして…何で…」 桃香が突然叫びだすように語り始めた。 貴文「桃香?」 桃香「食中毒が起きたのは私の家…それが原因でお父様は体調を悪くして… だけどあの夜…お母様はお父さんには手作りをあげないとねと言いながら… ニラに似た野菜を持ってきて…ちょっと待って、お父様の食中毒って…」 平田「それに関する資料も配布されている、現在の研究結果も兼ねた形で」(編集済)
平田「結論としてはスイセンが餃子に入っていたみたいだ。当時は検出技術が低くニラが腐ったものと思われていた。スイセンはニラに似ていて毒を持つ」 敷徳「玲奈さんの農場にスイセンは?」 烏丸「ありません。冤罪が今になって証明されて玲奈も浮かばれるでしょう」 熊野「玲奈さんは既に亡くなってるのか?」 (編集済)
烏丸「それは、これから話す中で明かします。村を出た玲奈は都内で水商売に従事してました。僕は自分の名刺を渡して、困ったら尋ねるようにいい別れました」
烏丸「でも不安になった私は翌日、営業前の彼女が働いている店に行ったんです。 そこで彼女は男に暴力を振るわれ、私はとっさに彼女を連れて逃げだしました。 あの時逃げた謝罪の想いもあったのでしょうが、自分の中で強い怒りも湧いたからです。 翌日私は玲奈の借金を完済する形で、彼女の世話役にお金を渡し、彼女から解放させました。 玲奈は私に巻き込んだことを謝り、私も彼女に謝る…おかしいですね、私達の関係って。」 敷徳「烏丸さん…」 烏丸は淡々としながらも、内に秘めたる感情を抑えながら語っていた。 烏丸「その後彼女は、私がアトリエのある事務所に住み込みで働きました。 私達が交際に至ったのは、それから1年後の事です。 ただその前から彼女と共に並行する形で、失踪したみちるの両親やシクトク病についても調べていました。 その際玲奈から、失踪前のみちるの両親から【山中組】と【正岡】には関わるなという事を聞きました。」 牧子「あの当時の私は…今更遅いわね…」(編集済)
烏丸「やがて娘が生まれ、加奈と名付ける事にしました。ところが加奈の様子が時折可笑しくなるのです。赤ちゃんにしては規則正しい踊りのような仕草です。私達夫婦はシクトク病の踊りじゃないかと背筋が寒くなりました」
烏丸「私と玲奈は加奈を守る為に、アメリカへの移住を決意しました。 アメリカではシクトク病の研究が進んでいましたし、何より家族を失いたくなかった。 私達はすぐに空港に向かおうとしました…でも外に出た瞬間、シク村長がいたんです。 あの男は言っていました[有名な画家の先生がこんな地味な所に住んでいるとは。 いやあんたのマネージャーに金を積んで良かった、さあ村へ来い。] 私は気が付くと牢獄に閉じ込められ、そこにはみちるの母親もいました。」 桃香「牢獄…そんな場所あるの…」 烏丸は歯を食いしばりながら、語る。 烏丸「そして牢獄の外から、あの男が目の前に現れました。 傍には手錠を付けられた玲奈、そしてあの男と同年代と思われる初老の男女がいたんです。 あの男は私に告げました「先生は国の宝だから安心してくれ、ただ玲奈は…」と不気味な笑みを浮かべ… そして玲奈は…初老の男女を睨み…彼らに告げたんです[村の方が大事なの、お父さん・お母さん]と そして私に[ごめんなさい…加奈とあなただけで]と言った瞬間、玲奈は…初老の女に…殺され…」 烏丸は過去を語った末での怒りから、涙をこらえたままうずくまる。(編集済)
敷徳「実の母親に殺られたのか」 烏丸「ええ。その後加奈を人質に口外しない事を条件に牢獄から出ました」 熊野「加奈は真由子達に預けられたんだな。みちるの母親はどうなったんだ?」
烏丸「みちるの母は廃人状態でうわごとの様に主人は殺された、せめて娘だけはと…」 敷徳「烏丸さん、疑問に思った事を聴いて良いですか? 玲奈さんの両親は何者ですか? どうも普通の村人とは思えない…」 敷徳は考え込む中、牧子は語る。 牧子「玲奈さんの親は、正岡として裏社会として活動してきた…」 熊野「待ってくれ正岡はあんたじゃ…」 牧子「私は復讐の為、正岡の仲間になった。 ただ玲奈さんの一件から…単独で正岡としての活動を始めたの…」(編集済)
敷徳「正岡と名乗る人は裏社会に何人もいるのか?」 牧子「裏社会は偽名で成り立ってるから、正岡の活動に共感する人は名乗ってるかもね」
敷徳「烏丸さん。牢獄は何処にあるんですか?」 烏丸「ここだよ。大広間の中央」 烏丸が床のタイルを外すと隠し階段が現れた。 熊野「なんと!灯台下暗しだな」 烏丸「降りてみますか。なんか残ってるかも」 牢獄は石で出来た頑強な造りで本格的なものだった。長く使われてないようで蜘蛛の巣だらけだった。(編集済)
敷徳「日は指している感じですかね、空気の換気も良い…地下道に似ているな。」 烏丸「あの時は、牢獄周辺しか見えていなかったが…」 牧子「烏丸さん思い出すのが辛いなら、あなたは戻ってもいいのよ?」 烏丸「いえ、大丈夫です。」 貴文「あの…俺も行く理由は、正次さんに関してか?」 3人が歩く中、後ろには貴文が入り口近くで止まっていた。 牧子「そうね正次さんは亡くなるまで、ここで監禁された可能性は高いわ。 そして運び出す人手が足りなかった場合、あなたも関わっているのでは?」 貴文「・・・・・・」 牧子「それにここは刺激が強すぎる、だから紗矢さんと桃香さんには待機してもらったわ。 熊野刑事には別室の人の現状報告と見張り、二夫さんもそのお手伝いとしてね。」 敷徳「うん…あれは何だ…」 敷徳が目にした物は武器庫、そこには反逆者リストと書かれている手帳が置かれていた。
烏丸「この武器は拷問に使う物です。手帳はシク村長達の反対派のリストです。正次さん、みちるさんの両親、私の名も」 烏丸は指差しながら説明した。
敷徳「リストには日向夫妻や三浦夫妻、玲奈さん。 それに唯さんの祖父母と同じ名字も、唯さんの両親か?」 貴文「物質的な証拠は無いと思うけどな… だいたい…このリストって名前以外…」 敷徳「これは…」 リストをのぞき込んで絶句する貴文とその内容に強い怒りをみせる敷徳。 そのリストには亡くなった人の写真や記述が記載されていた。 牧子「正岡夫妻ね…こんな奴らに信者がいるなんて」(編集済)
敷徳「決定的な証拠ですね」 熊野「玲奈さんの両親を逮捕しなければ。だが生きてるのか?既に結構な歳だろう」 (編集済)
敷徳「熊さん、待機のはずでは?」 熊野「県警に頼んでおいた、牢獄がどうも気になったからな。 二夫君とは連絡はできる状態だよ。」 牧子「あの、待機している皆さんは?」 熊野「ああ茜さんも含めて、大丈夫です。 いずれ知らせる事はあるだろうが…ところで烏丸さんは?」 烏丸は壁の方を見ていた。 敷徳「烏丸さん?」 烏丸「(地上と繋がっている場所が大樹だとしたら、この壁の中には…)」