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4人が話し合いを続けようとする中、探偵事務所のチャイムが鳴る。 敷徳がチャイムの主を確認すると、事件の被害者の一人である正造の娘・加奈が立っていた。 敷徳「加奈さん、何故ここに?君は旅館の仕事が忙しいのでは。」 少し驚く敷徳や熊野に、加奈は告げる。 加奈「ごめんなさい。私、女将である母がもう信じられなくなって…」 加奈の表情はどこか憤りが強く感じられ、今にも泣きそうであった。
敷徳「あっ…ここと言うのは、この事務所の建物全体の事で。ここには女性専用の駆け込み寺の住居施設もあり、加奈さんにはそこと事務所を行き来してもらおうかと、すみません説明不足で…」 敷徳の顔は加奈を誤解させてしまった恥ずかしさか、強い反省の色がうかがえる。 加奈「敷徳さん、お気遣いありがとうございます(ドキドキした…)」
敷徳はパンフに書いてある、合宿セミナーに電話を掛けた。 熊野「山中タケル、一見すると好青年っぽいが…」 パンフに載っている山中という男は、今でいう国宝級イケメンともいうべき美しきモデル体型の男だった。 茜「実際に会ったけど、本当に写真以上のイケメンだったからびっくりしたわね。」 敷徳「あっお忙しい中、申し訳ありません。」 敷徳の口調から、合宿セミナーと電話は繋がったようだ。
丸裸になったと言っても、山中は着替える部屋に移動して、何事も無かったかのように、着替えを済ませて皆の前に出てきた。 山中「えーとお客様ですよね?すみません犬達が騒がしくて驚いたでしょう。」 敷徳「(あっ、これが俗に言う残念イケメンか…)」
事務所前に戻ると、花束を持つ女性が立っていた。 敷徳「誰だ、あの女性は。」 熊野「まさか村の関係者で、加奈さんを連れ戻しに来たのでは?」 加奈「いえ、あの女性は見たことないです。」 二夫・原田・茜にも心当たりが無い中、こちらに気付いた女性は敷徳達に話しかけた。 女性「あの一夫さんが、亡くなられた場所はここで間違いないでしょうか?」
2人は住居施設に向かい、代表夫妻に事情を話して、加奈の移住許可の手続きを終えた。 敷徳「事件の内容は詳しくは話せないとはいえ、解決したら話すべきかな。」 代表夫妻には加奈は母親とケンカからの家出で、事務所に来たと伝えておいた。 しかし敷徳は、ある強い違和感を感じている。 敷徳「ところで…あの加奈さん、移住施設にいるんじゃ?」 移住施設にいるはずの加奈は、何故か敷徳の事務所前までついてきた。 加奈「えーと…代表の奥様に敷徳さんの夕飯を作ったら、施設に行きますとは伝えました。」(編集済)
買い物後に、加奈は台所に向かう。 加奈は手際よく、料理を作り上げていく。 「はい、鶏肉のスパイスカレーと豆のサラダになります」 敷徳「美味しい…凄いですね。」 敷徳はプロ顔負けの腕前に感動していた。 加奈「家事全般は父に教わったので…」(編集済)
深夜、事務所内の電話のベルの音で敷徳は目覚める。 敷徳「こんな時間に、もしもしどちら様ですか。」 敷徳は違和感を感じつつも、電話を取った。 ?「夜分遅くすみません、あのシクトク村の事件について…話したいことがあります。」 敷徳「村についてって、あなたは。」 ?「私は村の者でして、ただ詳しいお話は明日そちらの事務所の方で。」
敷徳は、二夫・原田・茜にも来てもらうように連絡した。 二夫と茜は現在事務所にいるが。原田だけはいなかった。 茜「敷徳さん達も聴いたと思うけど、兄にスキージャンプの団体から話をしたいという連絡が来て。 兄からは終わり次第、急いでこっちに向かうって言ったけど。」 熊野「考えて見れば、五輪中だったもんな…」 敷徳達は原田の様子を心配した、数分後に事務所のチャイムが鳴った。 敷徳「(加奈さん、クローゼットの中に)はい、今開けます。」 ?「すみません、昨日はあんな遅くにお電話して。」
敷徳は貴子の発言に、違和感を感じていた。 敷徳「(村ぐるみで隠せる事は可能か、茜さんの両親と正造さんが対象となっている薬物…)」 貴子「加奈…ごめんよ。」 心配そうに見る貴子を、加奈は貴子を睨み付けた。 加奈「ヤク中が原因と言いましたが…この人の言っていることは、嘘です。 だって私は父さんと共に、村から隔離されていたから…それでも2人で強く生きようって…父さんは… それに母は父さんが亡くなるまで、私達に会おうともしなかった。 それは、私が女として産まれたから…」(編集済)
熊野「女将は加奈さんに、戻って来いとも言わなかったか。」 敷徳「自分の旦那の死の真相を知りたくないのも気になりますが…加奈さん大丈夫ですか?」 加奈「はい大丈夫です、母には慣れているのでもう…」 加奈の表情はどこか虚ろで、暗くなっていた。 二夫「あの、皆さんちょっとよろしいでしょうか? こんな事、あまり言いたくないのですが」 敷徳「二夫さん、どうしたんですか…」 二夫「村から来た貴子さんの行動って、兄の捜査の視線を外すように感じられたんです。 あの加奈さん…あなたは本当に僕らの味方ですか?」
原田が急いで、事務所に来た。 原田「いやいや本当にごめん、話がかなり長引いてしまって。」 茜「大丈夫よ、スマホからこっちの様子は見てくれた?」 原田「ああ見たよ、それにしてもシクトク病か。」 原田は伝染病について、何か腑に落ちない表情を見せていた。 敷徳「原田さん、どうかしたんですか?」 原田「いや…昔これと似たような話を、遠征先の村のお婆さんが話していたんだよ。 ただその村も踊り狂うんだけど、感染の対象者は双子の母親なんだよね。」
加奈「幼い頃の母と、男の子2人と女の子1人の4人組の写真でした。 3人とも母と顔は似てなかったのですが、ただ…」 二夫「何かあったんですか?」 加奈「母に目撃された際、母はその写真を取った後にすぐ写真に向かって、 ごめんなさいと連呼しながら、うずくまって泣き出したんです。」(編集済)
女将である紗矢は、いつもの事と思いつつ旅館の開業の準備を始めていた。 クトクシ村の旅館はシクトク村とは対照的に、昔スポーツの合宿地にも選ばれたほどの良質な旅館であった。 仲居「女将、あの木って名前はなんて言うんですか?」 紗矢「あなたはこの村の出身じゃないから、初めて見るわよね。 あの木の名前は「紅都琥志(クトクシ)の大樹」、この村の名物よ。 あと本日仕入れた、川魚の名前は…」 紗矢は落ち着いた口調で丁寧に優しく、新人の仲居に説明している。(編集済)
女将「誰なの人の顔見て、声なんか出して。」 雷太「(あれ、違う人か?似ていると思ったけど…)あの、この辺に食べるお店はありますか?」 女将「食べるお店って、あなたはどこから来たのかしら?」 女将はどこか警戒しながらも、雷太に訪ねた。 雷太「俺は、紅琥村から来た者です。」 紅琥村とは、現在のクトクシ村の名称である。(編集済)
敷徳・加奈・二夫は、一夫の働いているパン工場に来ていた。 敷徳「この職場で一夫さんを知っている人が、他にいないかを改めて探る必要はある。 そこで収穫がなかった場合、一夫さんが住んでいた近辺の飲食店や繁華街から探るべきか。」 二夫「茜さんは、兄と同じ時期にセミナーに参加していた人達とコンタクトが取れたみたいです。 原田さんからも遠征先の村を調べる為に、当時参加していた遠征メンバーと話をしていると。」 熊野は署に戻り、シクトク村と原田が語った村の状況を探っている。 加奈「あっ、あの人柿沢さんじゃ?」 加奈は事務所に献花をした、一夫のパート先の柿沢の姿を目撃した。 #遅くなりましたが、紅琥村の(紅琥)呼び方は(べにこ)です。
敷徳のスマホが鳴る。 茜「茜ですけど、あの今話せますか?」 敷徳「大丈夫ですけど。」 茜「良かった。 離脱した参加者の人達から、一夫さんについて聴いた話なんだけど。 その人達は、月に1回は集会として集まっていて、一夫さんもその会に数回は参加したみたい。 それでそのお店なんだけど、そこが一夫さんの自宅周辺にあるのよ。」
敷徳「車はまだかな、うん茜さんからだ。」 敷徳は茜のラインを黙読した瞬間、頭を抱えた。 加奈「どうかしたんですか?」 敷徳「これを見てください…」 敷徳は加奈と二夫にスマホを見せた。 茜「件名:ごめんなさい。 今、事務所前で合流した兄さんと…山中主宰の3人で料亭に向かっています。 何でも、山中主宰が勉強会の内容が気になるらしくて。 お客様の方が勉強会の内情が探れて有利とか、懐石は自分が奢るから協力させてと強引に。 本当にごめんなさい、ただ収穫も一つ。 主宰が運転する赤のフェラーリの前に、空色のベンツが私達と同じ料亭の方向に向かっています。」(編集済)
敷徳「車内を覗いてみたが、怪しい物は何もないな。」 加奈「そう言えば、茜さんは野球帽の男の事は知っているのでしょうか。」 二夫「もし知っていたら、スマホにすぐ連絡があるのでは?」 3人が考え込む中、茜から連絡が入る。 茜「集会の参加者の中に、私や一夫さんと同じ合宿の参加者がいる事が分かったわ。 それと兄さんから、遠征先の村で話したいことがあるって。」 茜のスマホを、少し泥水気味の主宰が奪った。 主宰「もしもし、僕のマイフレンズ達元気? あのさぁ、マイフレンズ達の分の一番高いコースの懐石料理もうすぐ来るから、こっちに来てくれないかな~? それにしても、あいつら勉強会と偽ってふざけんなよな~まったく。」(編集済)
二夫「(って、本当に良いんでしょうか?)」 敷徳「(まあ主宰の機嫌を損ねない為に、形だけで)。」 2人は苦笑しつつも、ノンアルコールビールを飲み始めた。 茜「そう言えば兄さん、遠征先の村で得た情報についてだけど?」 原田「ああ、元チームメイトがその村の名物である「紅都琥志の大樹」という木の写真を送ってくれたんだよ。 ただ、これって「血塗られた木」に似てない?」 原田が見せた写真には、神々しい美しさとどこか違和感を感じさせる木だけが映っていた。(編集済)
敷徳「さて、今後に関してだが、紅琥村も調べるべきか。」 熊野「紅琥村についてだが、秘湯マニアに有名な場所でシクトク村よりも規模は大きい。」 加奈「私の村の反対側は、へんぴな場所では無いけどそんな有名な所なんですかね?」 茜「ねえ紅琥村で検索したら、こんなつぶやきが出てきたんだけど。」 つぶやき「秘湯マニアから聴いた紅琥村、温泉だけじゃなくご飯・名所(名物の大樹以外も)共にかなりレベルが高い。 ただ村のガイドさんに、近くのシクトク村との関係性や村の名前が変わった理由を聴くと。 数秒?近く黙って、「昭和47年に名前が変わりましたが、理由は分からないです。」と言われ、シクトク村については何も語らなかった。 メディア取材も断っていると謎多い。」 (編集済)
敷徳「ここが紅琥村か、シクトク村に向かった時よりも早く着いたか。 うん、村にはコンビニもあるのか。」 農村のようなシクトク村に比べて、紅琥村は全体的に明るく活性化された雰囲気を漂わせている。 二夫「旅館の予約が取れたのは良かったですが、何か想像していた村とは違いますね。 駅近くにある飲食店も、人で賑わってますし。」 二夫も敷徳と同じように村の雰囲気を察する中、一同の視界に【紅都琥志の大樹】が入る。 熊野「おいおい、こんな壮大な紅葉だったか?」 加奈「そうですよね、写真で見た時は村の木に似ているかなと思ったけど。 実物は本当に綺麗…何かシクトク村とは正反対ですよねこの村って。」 【紅都琥志の大樹】を、どこか虚ろで悲しげな表情で加奈は見つめていた。
紗矢はどこかきょとんとしながらも、考えていた。 紗矢「(シク女将って、この人達は妹の関係者なのかしら。) あのお客様、私に何かお聞きしたいことがあるのでしょうか?」 落ち着いた口調で、紗矢は敷徳達に尋ねた。 加奈「本当に、母さんではないの?」 紗矢「(この子は私を母親だと思っているのかしら。 確か、妹の話では…)」
枕投げ後、敷徳はスマホの確認をしていた。 敷徳「原田さんの報告では、ここで合っているのか。」 報告を見ると、野球帽の男が都心の高級住宅街にいる事が判明された。 二夫「あの、兄の事で思ったのですが。」 熊野「二夫さん、思った事とは?」 二夫の言葉に熊野が訪ねる。 二夫「もしかしたら、兄は多額のお金を所有している人物と関わっているのでは? 空色のベンツ・集会での料亭に対し、兄の日常生活がどうも引っかかって。」
?「あなた、お客様でもいらっしゃるの?」 おっとりとした口調の女性の声が聴こえると共に、烏丸の表情が一瞬曇る。 烏丸「お二人ともすみません、ちょっと待っていてくれませんか。」 烏丸は声のする方向に移動した。 烏丸「みちる、リモートの仕事は終わったのかい? あと君に頼まれた、ロールケーキ買ってきたよ。」 原田「あれ、烏丸さんって一人じゃないの?」 茜「何かリモートって、聴こえなかった?」 二人が小声で話す中、烏丸と共に20代前半位と思われる美しき女性が、こちらの方に向かう。 みちる「初めまして、烏丸一郎の妻の烏丸みちるです。」(編集済)
烏丸邸 みちるは苛ついていた。 みちる「ねえ、何で「シクトク村」って言ったの?」 「(紅琥村)のプランもあったのに。」 烏丸「君だって、すぐに茜さんに話をしたじゃないか。 彼女とは親しかったんだろう?」 烏丸はどこか怯えながらも、みちるに訪ねた。 みちる「そうだけど、私としてはもう少し様子を見たかったのよね。 それに私、茜の事って本当は…」 みちるは考えつつもどこか笑みを浮かべ、タブレットPCを起動させオンラインゲームをやり始めた。 烏丸「それにしても、これで二回目か。 シクトク村の出身者が来るのは… 死んだ、一夫に続いて。」
熊野「(凄いな、どうやってこんなに多くの分身を一瞬にして?)」 二夫「(殺陣も凄いですよね、まさかここまで本格的だったとは。)」 忍者ショーは一同の想像以上にして、ショーは終盤へと進んでいった。 ?「さて小童、いや雨月と部下は言っていたか。 ここまで来た褒美として、俺の手でお前を仕留めてやろう。」 大柄な男が大きな刀で、雨月と呼ばれた若き忍者に飛びかかった。 雨月「ここでやられはしない…仲間の仇は取らせてもらうぞ…久志吐村頭首・播魔… 紅琥式忍法・紅残雨!」 雨月が放った忍法から雨が降り始め、雨月の姿は雨と共に消えた。 播魔「何だこの雨は、俺をがっかりさせるなよな雨月。 お前がどこにいるかぐらい、一瞬で把握できるんだよ。」 播魔が笑みを浮かべたと同時に、雨が止んだ瞬間に雨月は上空から現れた。 それを見て呆然となる播魔を横目に、雨月は鎖鎌で斬り捨てた。 雨月「終わりを迎えるのはお前だ…お前が造り出した悪しき村…久志吐村と共に…」 倒れこむ播磨、ショーは盛大な拍手の中終わりを迎えた。 敷徳「はあ凄かったな、一体どういう仕掛けなんだろうか? ただ、悪しき村の久志吐村って…」(編集済)
加奈「村の人達はとても好意的でした。 ただ温泉の出る山は、元々はシクトク村の…言ってましたね。」 敷徳「温泉の源泉の元、そして昔は貧しかったけど、今は活性化されている紅琥村か。」 敷徳はシクトク村と違い、都会の者にも友好的な紅琥村にどうも引っ掛かりを感じている。 熊野「忍者ショーを調べたのだが、ショーの関係者は都内で活動する新鋭の小劇団の様だ。 月に一回は紅琥村からのオファーで、忍者ショーの公演をやっていると。 また村の過去の歴史を探ったが、久志吐村という名前は一切記載されていなかった。」 二夫「久志吐村は、ただの創作なんですかね。 そういえば、劇団にオファーしたという人物は?」 熊野「オファーしたのは紅琥村の村長、風祭貴文。 彼は…シクトク村の村長の息子だ。」
旅館の部屋で話し合う4人に、年老いた仲居が部屋を訪ねる。 仲居「失礼します。 本日の夕食の変更の報告のお知らせになりますが、皆様よろしいでしょうか?」 敷徳「夕食の変更って、本日は何かあるのですか?」 加奈「私達は自室での食事と、予約の時に申し込みましたよね。」 疑問に思う一同をよそに、仲居は語った。 仲居「いえ、本日は紅琥村の村長とシクトク村の村長が参加する納会が、宴会場で行われます。 シクトク村の方々も来てくれたようで、つきましてはシク女将から皆様もどうぞとの申し出がありましたので。 あとここだけの話ですが… 風祭村長とご両親は、風祭村長が高校を辞めてから絶縁状態なんですよね。」
シク女将「ちょっと加奈、何しているのよ? あんたも村の招待客なんだから、今はこっちに座りなさい。」 どこか上機嫌なシク女将に対して、加奈は敷徳達に会釈して、母親の方に渋々向かっていた。 敷徳「加奈さん、大丈夫かな?」 熊野「まあシクトク村に戻れとか、そういう事は言わなそうだけどな。」 敷徳達が用意された席の方に向かう途中、談笑する声が聴こえる。 ?「いやー僕と妻の出会いは、美術館での烏丸先生の展示会でして。 彼女の両親に会った時は驚きましたよ、紅琥村の村長の娘だったとは知らなかったので。」 そう語る、長身で細身の朴訥とした温和な雰囲気を漂わせる男。 どうやら彼が、紅琥村の村長・風祭貴文のようだ。 二夫「あの人が、風祭村長ですかね?」 熊野「敷徳と同年代かね、もっと気性が荒い印象だったが。」 敷徳「シクトク村の村長を考えると…うん、あれは何だ?」 敷徳は壇上にある看板を見つめていた。 看板には「シクトク村と紅琥村の統合記念祝賀会」と記載されていた。(編集済)
敷徳「紅琥村の人もか、うん音楽は違うような?」 紅琥村の住民も踊りだす、奇怪な踊りは終わりを告げた。 加奈「はぁ疲れた、何でこんな形で踊らなきゃいけないのよ。 やっぱりお母さんは…」 ふてくされている加奈を、心配そうに雷太が加奈の方に来た。 雷太「大丈夫、何か笑っていたの風祭夫妻とか外部の人だけだったよね。」 加奈「あっ雷太君ありがとう、雷太君も何か暗くない?」 雷太「今回の祝賀会の料理って、風祭さんが呼んだ有名フレンチ店の人が食材から担当したんだよ。 村の活性化だったら俺がやりたかったし、母さんも戸惑ってばかりで。」 加奈「愚痴なら付き合うよー。」 二人は同世代という事もあってか、談笑していた。 熊野「すぐに打ち解けられるのか、若者のコミュ力はすごいな。」 敷徳「何を感心しているんですか、それにしてもさっきの踊りは…風祭さんと話が出来ればな。」 二夫「みんな浮かれているんですかね…私には分かりませんよ。」 祝賀会には建設関係の人々・シクトク村の館長なども来ていた。 ?「本当にみんな浮かれていますよね、私達は罪人なのに…」 暗い女性の声に気付く、その声はシクトク村の村長の妻の貴子であった。 熊野「あんたはこないだの、何の用ですか?」 貴子は暗く思いつめた表情で、こう語りかけた。 貴子「その件は改めてごめんなさい…ただこの写真を見てはくれませんか? 今日、桃香さんが撮影した【紅都琥志の大樹】の写真で、私を奴隷のように扱う主人が映っています。 でも…これは【血塗られた木】かも知れない。」(編集済)
敷徳「ご主人がかぎつけた真相というのは?」 貴子「一つは伝染病の発生理由になります。 シクトク村では【余所者と結婚して出来た女の子】、紅琥村では【双子の母親】と言われています。 ただ、この伝染病の本当の発生理由は、どちらの村でも起こりうるんです。」 熊野「つまりシクトク村でも双子の母親、紅琥村でも余所者の女の子が伝染病に?」 二夫「(双子の母親って、まさか…)」 二夫はある事が浮かび、少し憤りの表情を見せる。 貴子「シク女将…いえ真由子の姉である、紗矢も彼女のお母さんの症状を抑える為に。 シクトク村から離れた、紅琥村の旅館に引き取られました。 紅琥村の村長は、養子先が気に入った方の双子を引き取らせ、その際に多額のお金を貰っていました。 これはシクトク村の館長も知っている話だと思います、彼は紅琥村の村長と手を組んでいましたから。」 #シク女将の名前を真由子にしましたが、よろしいでしょうか?(編集済)
熊野「すまない警察から連絡が来た。 終わり次第、そっちに向かうよ。」 二夫「すみません…僕も、もう少し貴子さんと話がしたいので。」 敷徳「分かりました、二夫さん大丈夫かな。」 熊野「連絡が終わったら、俺が二夫君の様子を見に行くよ。」 敷徳「お願いします。」 別の場所に移動する熊野と二夫に会釈し、敷徳は風祭を見つけて挨拶をした。 敷徳「すみません風祭さん、お話したいことがあるのですが?」 シク村長「おいおい、よそ者のあんたが何でここにいるんだ?」 貴文の近くにいた、シクトク村の村長が敷徳を睨む。 貴文「辞めなよ父さん、すみません本当に。 真由子さんから聞いています、探偵の敷徳さんですよね。 紅琥村の村長、風祭貴文です。」 貴文は丁寧に一礼し、敷徳に名刺を渡した。 敷徳「あの改めて、少しばかりお時間よろしいですか?」 貴文「はい構いませんが、お話というのは一体?」 敷徳「先ほどの余興についてです。 紅琥村の音頭は、シクトク村と違って曲調や歌詞も違うんですね? クッシトックではなく、クットクッシではと思ったので。 それに、この音頭は伝染病と関係性あるのに、何故村人の一人である貴方は笑えたんですか? 他の村人の方は貴方の奥様、シク村長、シクトク村の館長、真由子さん以外笑ってませんでしたが…」 #名前の許可、ありがとうございます。(編集済)
貴文「それは、当たり前でしょう? その記録や資料は、もう数十年以上前から廃棄されたのですから。 シクトク村と紅琥村が、実は【久志吐村】と言う1つの村だったなんて、親父の年代前後のごく一部の者しか知りません。」 敷徳「1つの村?」 貴文「はい。 それと敷徳さん、あまり深入りするのは危険ですよ。 真由子さんの旦那さんの正造さん・一夫さんという男性も訪ねたんですよね、親父に【久志吐村】とは何だ?ってね。」 貴文の表情は温和ながらも、どこか狂気を漂わせていた。(編集済)
貴文「あの、あれ本当の音源だと思っていませんよね?」 敷徳「いえ…」 貴文「良かった、お祭りや余興用に流す偽の物とは、理解はしているんですね。 まあ伝染病の当事者の方が、踊るのは滑稽でしたが。 加奈さんは、かなり怒っていたな。」 敷徳「滑稽ですか…」 どこか馬鹿にしたかのように、微笑みながら語る貴文。 それに対して、敷徳は怒りを抑えていた。 貴文「もしかして怒っていますか? まあ僕も親父と同じく、余所者は嫌いなので。 あなただけに、自分の本性を見せてもためらいが無いんですよね。 それに伝染病に関しては心配はありません。 そのワクチンが、明日海外から届きますから。」(編集済)
二夫「あの、貴子さん。 お聴きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」 貴子「まだ、聴きたい事でもあるのかしら。」 二夫「俺の両親や兄である井上一夫について、貴子さんは何か知っていますか?」 貴子は表情を曇らせながらも、少し離れた場所に二夫を誘導し、語り始めた。 貴子「まず、あなたの両親についてだけど退院直後に亡くなったわ。」 二夫「亡くなった?」 貴子「ええ、村から奥さんの実家に引っ越そうとしての交通事故で。 亡くなった直後、施設の館長が引き取ったのよ。」 二夫「それは、本当に事故なんですか?」 貴子「ええ…あとあなたのお兄さんについては…」 貴子は二夫の事故の質問直後、何かに気付いたのかどこか歯切れが悪く、おびえている様だった。 二夫「貴子さん?」 桃香「お母様、こんな所で何をしているんですか?」
敷徳と二夫は、来客用の奥の方の席に案内された。 敷徳「壇上近くの村の人の席から離れているな、この位置じゃ声や姿も。」 二夫「そうですね。 そう言えば、熊野さん遅くありませんか?」 敷徳と二夫の方に、熊野が小走りで向かってきた。 敷徳「遅かったですね、何かあったのですか。」 熊野「本当にすまん、この村の警察関係から電話が来たんだよ。 余所者は立ち去れと、それで揉めてしまってな。 それにしても二人とも何かあったのか、少し元気が無いように思えるが?」 熊野は敷徳と二夫の様子が、気になっている様であった。 敷徳「実は…」 敷徳が語ろうとした瞬間、桃香が微笑みながら飲み物とお菓子を持ってきた。 桃香「えーと、来客の皆さんですよね? 退屈なのは分かりますが、少しお静かにお願いしますね。」 敷徳が語ろうとした瞬間、桃香が飲み物とお菓子を持ってきた。 桃香「こちら本日来れなかった、烏丸先生から頂いたシャイニーマスカットのジュースです。」 烏丸先生は著名な方で、式典に飾られている作品は」 桃香の説明の途中、壇上近くの席の方が騒がしくなっていた。 悲鳴や怒声と、様々な声が交差していく。 敷徳「嫌な予感がする…」 敷徳、熊野、二夫、桃香は声の近くまで移動した。 「いや…いや…」膝から崩れ落ちる、紗矢。 「お袋、大丈夫か。」紗矢を心配し、彼女の寄り添う雷太。 「うん、ドッキリか?」酔っぱらっているのか、現状を理解していない館長。 「ドッキリじゃないわよ…」館長をたしなめながらも、震えや恐怖を隠せない真由子。 「何で…」呆然としながらも、敷徳達の方を見つめる加奈。 「おい…ふざけんなよ」普段の彼からは想像できない、怒声からの憤りを見せる貴文。 そこには壇上にある【紅都琥志の大樹】の絵の前で、口から血を流して倒れこむ。 シクトク村村長の変わり果てた姿だった。
?「失礼、ここからは私達が行います。 熊野刑事、よろしいでしょうか?」 そう放ち、一同に会釈するスーツの中年の男と若い青年の2人組。 敷徳「あなた方は?」 ?「私達は、この村の管轄の○○県警から来ました。」 そう言って、スーツ姿の男達は一同に警察手帳を見せた。 手帳の内容から、中年の男は警部・若い男は刑事のようだ。 警部「熊野刑事、所轄外のあなたは私達のサポートをお願いします。」 熊野「分かりました…」 どこか重たい空気を漂わせる2人。 敷徳「もしかしてさっきの熊さんの、電話の相手って…うん?」 敷徳は現場近くにいる貴子が微笑みながら、何かブツブツと呟いていることに気付く。 貴子「やっとあの男がいなくなった、これが【血塗られた木】の力…」(編集済)
敷徳「あくまで取り調べであり、逮捕ではないんだけどね。 熊さん、取り調べでは冷静になって貰いたいんだが。」 二夫「ただ、俺が貴子さんと話をしている時の事ですが。 貴子さん、桃香さんが来た瞬間怯えたように感じたんですよね。」 敷徳「怯えか。」 考え込む2人に雷太が声をかける。 雷太「あの、大丈夫ですか?」 雷太が敷徳達に声をかけてきた。 敷徳「あっ雷太君、紗矢さんや加奈さん達は大丈夫ですか?」 雷太「お袋なら、今医務室で休んでいます。 加奈さんと真由子さんも、そちらにいて今は落ち着いています。 あと加奈さんに頼まれた事があって。 シク村長が死ぬ前の状況について、敷徳さんや二夫さんにも説明して欲しいと。」 敷徳「それはありがたい雷太君、お願いできるかな。」(編集済)
敷徳「皆さんの雰囲気はどうでした?」 雷太「シク村長の周辺は、途中から殺伐とした感じでしたね。 亡くなったシク村長には失礼になりますが、桃香さんにしつこく絡んでいた様子でした。 一方で奥さんの貴子さんに対してはぞんざいな扱いで、渡された持病の薬は渋々飲んでいましたけど。 あとシク村長は、ナッツ類以外のおつまみも食べていたかな。」 二夫「ナッツ類以外?」 雷太「はい、シク村長はナッツアレルギーなので。」 敷徳「そうかアレルギー、そして服用していた薬か。」 敷徳は自らの手帳に、ナッツアレルギー・服用していた薬をメモした。 敷徳「貴文さんの様子は、どうでしたか?」 雷太「貴文さんは、最初は落ち着いている感じだったけど。 ちょっと途中からシク村長に対しての言葉の端橋に、喧嘩を売っているように思えて。」 敷徳「それは、貴子さんや桃香さんに対しての怒りからかな?」 雷太「それだけじゃない感じでしたね。 何かシク村長と貴文さん、お互いけん制しあっていて、遠くから見ていてもあまりいい気分じゃなかったかな。」 雷太の表情はどこか暗い感じだった。(編集済)
雷太「隠し地下道と言われても、まず紅琥村にはそういう所は無いと思います。 ただシクトク村の方は俺は詳しくは無いので、すいません役に立てなくて。」 敷徳「いや、こちらも君に対して感情をぶつける形で苛立ってしまった。 本当に申し訳ない。」 敷徳は事件を解決したい焦りから、雷太に対して感情的になったことを謝罪した。 敷徳「あの君達に関しても聞いていいかな、医務室の事が気になるので。」 雷太「はい、俺達の方は和やかでしたね…途中までは。」 二夫「途中までは?」 雷太「施設の館長という方が、古いアルバムを持ってこっちの方に来て。 館長が『懐かしいよな、みんな仲良くて』と笑いながら、俺達にアルバムの中の写真を見せたんです。 その写真を見た瞬間お袋は急に泣き出して、真由子おばさんも涙を流しながら館長に激怒したんです。」 敷徳「涙を流しながら?」 雷太「はい、真由子おばさんも泣いていました。 『これ以上、思い出させないで』って、あとお袋は『ごめんなさいって』連呼して…」 敷徳「『ごめんなさい』…確か加奈さんからも、真由子さんが写真を見て泣いて謝罪した話が? すみません、そのアルバムはどこに?」 雷太「アルバムは、確か館長が。」 雷太が周囲を見ようとした時に、館長が敷徳達の前に姿を現した。 館長「楽しそうな話だな、俺も付き合わせてくれないか。 アルバムの写真、見たいだろ?」 二夫「あんた、まだいたのか…まあ、今はあんたと争ってもしょうがないか。」 冷静になろうとする二夫を横目に、館長を自分の持っているアルバムの写真を見せた。 そこには男の子の双子、真由子と紗矢に似た女の子の双子、真由子達と同年代の女の子1人、若い男女が写っていた。(編集済)
敷徳「この2人組の男の子について知っていますか?」 館長「男の片方は、貿易商に引き取られて、イギリスで跡を継いでいる。 もう1人はこの村を離れて、県外の漁港で働いている。 まあ別れた女房から聞いた話であり、俺は2人には会ってないけどな。」 現状を思い出してか、表情が暗くなりつつも2人の所在を語る館長。 敷徳「失礼、女の子の方は?」 館長「ああ、その子なら…事故で亡くなったよ。」 二夫「何か隠しているのか、まさかあんた。」 少し歯切れが悪くなったように思える館長に、二夫は追求した。 館長「違う、あの血塗られた木での事故は俺だけじゃない。 シク村長一家、真由子と紗矢も…」 館長は自らの発言に焦りの色を見せ始めた。(編集済)
館長は敷徳・二夫・雷太に語り始めた。 館長「亡くなった子は唯と言って、親を早くに亡くしたシクトク村の子だった。 明るく元気な性格で、あの子がいる時はシクトク村も今のように排他的では無かった。 それに真由子と紗矢とは、本当の姉妹のように仲が良かったよ。」 敷徳「(姉妹のように?真由子さんと紗矢さんは生き別れでは…)」 敷徳は疑問に思いつつも、館長の話をもう少し聴くことにした。 館長「紗矢のお別れ会があると知った時は、唯は泣き出すほどだったからな。 事故が起こったのは、そのお別れ会の時だった。」 館長のお別れ会という発言に、敷徳は思わず声を上げた。 敷徳「いい加減にしてくれ。 真由子さんと紗矢さんは、生後すぐに生き別れたんじゃなかったのか? お別れ会と言い、あんたの話には矛盾が多すぎる。」 雷太「敷徳さん、落ち着いてください。」 怒れる敷徳を雷太がなだめ、それを見た館長は驚きながら答えた。 館長「おい、俺は本当に真実を言っているのだが。 まさか…あんた達は知らないのか? 伝染病の感染者は踊り狂うだけじゃなく、記憶障害も発症するって。 症例の一つとして、昔の記憶ほど記憶が改ざんされる事を…」(編集済)
館長「おい驚くな、このマジックは成功した。 それに唯はあくまでサポートで、マジックはシク村長が主体でやっている。」 敷徳「驚かせないで下さい、ただこのマジックって?」 館長「ああ…事故が起こったのは次のマジックの時で、このマジックは俺も手伝った。 シク村長は剣のマジックに満足した後、脱出マジックを始めた。 村長は唯にテレポートの力を与えると言って、唯を箱の中に入れて呪文を唱えた。 その呪文後に、箱を開けると中は空っぽだ。 みんなは唯がいないと驚き、俺は信じないという下手な芝居で、唯を探しに行く。 その数分後に唯は、お別れ会会場と少し離れた川辺の木陰から出てくる予定だった。 しかし唯は現れなかった。 シク村長は青ざめた表情で「唯がいない」と叫んだ。 俺たちは必死に唯を探したよ、その後だ…真由子と紗矢が見つけたんだ。 川に浮かぶ、唯の変わり果てた姿を。」(編集済)
敷徳「子供1人で、トンネルの移動をさせたのか?」 館長「短い一本道で、何回か練習もして、唯も乗り気だったよ。」 二夫「トンネルの出口には、誰もいなかったのか?」 館長「いや、貴子さんがいたよ。 元々彼女も探すふりをして、唯を外に出す役目だったからな。」(編集済)
貴子「唯ちゃんも呪いで亡くなってしまった。 あの子は何も悪いことしていないのに…あの男と違って。」 敷徳「あの、あの男ってシク村長の事ですよね。 どうしてあなたはここまで、実在しない呪いに固執しているのですか?」 貴子は敷徳の質問に激高した。 貴子「呪いは本当にあるのよ…何故、誰も信じないの? 私が小さい時から、この村で不審死を遂げる者の近くには必ず【血塗られた木】があった。 私が呪いだと言っても、あの男は私を馬鹿にして…私や貴文にも暴力を振るい始めた。 貴文が村長になってからは…落ち着いたけど、あなた達がこの村に来てから… 敷徳「あの貴子さん、僕らはこの辺で。」 これ以上話しても無駄だと察し、去ろうとする敷徳の腕を掴む貴子。 貴子「私は止めたのよ…でもあの男は呪いなんて無い、証拠をあいつらに見せてやるって。 亡くなる前に、あの【血塗られた木】で写真を撮ったのよ…本当、馬鹿な男。」 病的に語り続ける貴子に戸惑う中、貴文が敷徳達の前に姿を現す。 貴文「母さん、県警から桃香が明日釈放されるという報告があった。 これで…またかよ。」 #前回の投稿が混乱させる形になり、申し訳ありません。(編集済)
貴文「すみません母は父の死後から、精神が不安定で。 母さん疲れているんだよ、今日は部屋に戻ろう。」 貴文が母の貴子を部屋に連れて行こうとするが、貴子は拒んだ。 貴子「止めないで貴文、私達はようやく自由になれたのよ。 あの男は死んだし、この場には桃香さん…いや桃香もいない。 あの女、楽しそうに主人を【血塗られた木】の前で、撮影したのは感謝したいけど…」 貴子「紅琥村前村長の娘としての血は争えない。 だって、あの女は私達に隠していたんだから…」 敷徳「隠していた?」 そう言って貴子は客室に、一同を誘導した。 貴文「僕と桃香の部屋…母さん何しているんだ。 おい辞めろよ、おい」 取り乱す貴文にも気づかず、貴子はある戸棚から一つの古い書物を取り出した。 敷徳「これは…」 古い書物は【久志吐村奇譚】という題名で、表紙には【死苦十苦】という文が記載されていた。 貴子「これだけじゃ足りないわよね。」 そう言って貴子が本を開くと、井上一夫の行動が撮影されている写真が落ちてきた。 そしてその中には、一夫が死んだ時に持っていた写真もあった。(編集済)
桃香「あれ、貴文さんは?」 貴子「貴文は、ワクチンの説明会の打ち合わせに行っているわ。 あなたより、仕事を優先したようね。 これを持っていた事にも、貴文は驚いていた見たいだし。」 貴子は一夫の写真を桃香に見せた。 桃香「この写真の人って、村の事を探っていた人ですよね? 何か怖かったから、興信所に依頼したんですよ。 というか、写真はどうやって?」 とぼけるように聴いてくる桃香に、敷徳は告げた。 敷徳「あなたが所持していた、この書物の中に入っていましたよ。」 そう言って敷徳は【久志吐村奇譚】を見せた瞬間、桃香は呆然とした。 桃香「何でそれが…金庫に保管していたのに、何であんたが持っているのよ。 一夫や【久志吐村奇譚】の存在を知っているのは、私とシク村長以外では… 貴文さんと烏丸夫妻だけよね、まさか裏切ったの? 私や烏丸夫妻が、当時組員だったあいつを抜けさせてあげたのに。 あいつをまっとうに育てて、お父様にばれない様に跡を継がせた… 私は愛していたのに、ふざけるな…ふざけるな…ふざけるな」
桃香「お父様の言いつけよ。 この書物は継ぐ物、外部には漏らさず、廃棄してもならない。 直接の血縁が、これを受け継ぐ物だって。 ただ、中身は見てないようね。」 書物の中身は写真以外には、箱と鍵があり、その鍵は見つからなかった。 敷徳「あなたが鍵を所持…失礼。 誰だこんな時に、うん原田さん?」 敷徳は鳴りびびく携帯から、原田の着信に出た。 原田「敷徳さん…ようやく出てくれた。」 敷徳「原田さん、今まで連絡なかったから心配だったんですよ。 野球帽の男に関する、新しい情報があったのですか?」 原田は敷徳の返答に少し苛立ちながら答えた。 原田「あの…シク村長が亡くなった件や、シクトク病のワクチンはニュースでも観ましたけど。 ただ野球帽の男が、烏丸という芸術家。 彼の邸宅の帰宅後から…茜がいなくなってしまったのは、熊野刑事から聞いてますよね?」(編集済)