烏丸「失礼。この壁の向こうに大樹の根があります。少し、見てみたいのですが」
熊野「よし、乱暴だが皆下がってろ!」
熊野は拳銃を石の壁に向かって何度も撃った。
やがて壁はボロボロと崩れた。
(編集済)
敷徳「これは、人の骨…」
熊野「おい、ここに埋めていたのか。」
貴文「リストの写真と同じ服装だよな…」
烏丸「玲奈…」
呆然、驚き、怯え、怒りと4人それぞれの感情が渦巻く中、牧子はリストを読む。
牧子「【久志吐の花】を暴く者は埋める。大樹を呪いにすれば俺達は生き残れる。
誰かのメモね、くだらない」
敷徳は考え込んでいた。
敷徳「(真由子さんと紗矢さんの両親の記録がない…逃げても名前は記載されているのでは?
それに熊さん…その銃は改造銃か?)」(編集済)
敷徳「(実は仲間だったのか?逃げたふりして)」
真由子と紗矢の両親を疑い始めた敷徳は、熊野の手に持った銃を観察した。
敷徳「(大きいな。警察の銃はもっとスリムなはず。熊さんはいつも僕が事件を請け負うと付いてくる。本来、現地の県警が捜査するはず。この人は本当に刑事だろうか?署に行った時もいつも待合室に居るし。まさか僕のストーカー?)」
敷徳「(僕は何て意味不明な事を…銃は武器庫からだろ…だが頭がぼぅーッとする…)」
牧子「何か壁の方から匂いがしない…それに敷徳さん顔色悪いけど大丈夫?」
敷徳「(柿沢牧子か…この女も裏社会の人間だと思っているが、こいつはかき回しているだけじゃ?
それにこの女と文也…関係性と反応がよく分からない…)」
敷徳の異変に牧子は気づき、烏丸も察する。
烏丸「皆さん敷徳さんを連れて、大広間の方に移動しましょう。」
敷徳「(烏丸一郎…近年休業していたのは記憶障害の影響か?
ただこいつの言っている事は本当なのか…あと茜さんに対するあの時の対応…茜さんと原田さんは…)」
敷徳は意識がもうろうとする瞬間、ある異変に気付く。
敷徳「(そういえばあのリストは…奇譚よりも保存状態が良かった…
もしかして、ここには最近誰か来て…そいつがこのリストを置いたとしたら…)」
そう考えながら、敷徳は意識は保ちながらも倒れこんだ。
大広間に戻ると敷徳は床に寝かされた。
烏丸「根は花のエキスを吸ってますからね。一番毒が濃い土壌です。その匂いを嗅ぐだけで侵されても不思議じゃない」
牧子「なぜ敷徳さんだけ倒れたのかしら」(編集済)
貴文「例えば、この村に長い間住んでいたり、あと血縁が近い者は抵抗力があるとか?」
烏丸「確かにその筋も考えられるが、そうだとすると…あの人は何だ?」
烏丸は熊野の方を見ている。
牧子「さっき彼が使用した壁を壊した銃は、武器庫に置かれていた物だけど手慣れ感じだったわ。
それに警察の捜査って本来は二人一組…だけど単独行動…」
敷徳「うーん…あれ、何で大広間に…」
二夫「あっ大丈夫ですか、敷徳さん?」
倒れていた敷徳を傍にいた二夫が介抱する中、熊野が接してくる。
熊野「探偵、回復したのかって皆さんどうした?」
熊野は周囲の自分に対しての視線に気づく。
貴文「あのさぁ、あんたに色々と聴きたいんだけど。」
熊野「単独行動か…実は自力だと見当はずれな推理が続いた事で、署内から落ちこぼれ扱いされて…」
牧子「それにしては銃の扱いに慣れ、毒素に対しての抵抗力もあるように感じられますが?」(編集済)
熊野「銃は警察学校で一通りの種類を撃ってるからのう。毒素は警官の習性で異臭がする時は息を止めてるからじゃ」
烏丸「熊野さん、銃は改造された違法な物です。それを撃った経験は無いはず。それに毒素は皮膚からも吸収されるんですよ」
(編集済)
熊野「あがいても無駄か、ワシは探偵が憎いだけなのに。」
敷徳「えっ…」
熊野の発言に、敷徳も含めて呆然とした。
貴文「それはどういう意味なんだ?」
熊野「ワシはなこいつの師匠と親友で、刑事を辞めて親友のバディになりたかった。
敷徳は気にいられ、探偵を引き継いだ。
だが…ワシはこいつの才能が憎かった。
それからは…敷徳の弱点を探る為に、時間の許す限り、監視を続けた。」
敷徳「(えっ…嘘だろ…)」
牧子「だから一夫さんの亡くなった現場近くに、あなたはいたのね。」
熊野「ああ。こいつのストーカーそのものだよ」
敷徳「(何ていう変態だ。旅館に泊まった時も僕の寝顔を見続けてたのか)」
二夫「でも銃や毒素はどう説明するんだ?アンタは村と繋がってたのか?」
(編集済)
熊野「だから銃は憧れからそういうのを調べて練習し、ただ毒素は…
あっそういえば以前山中タケルの金で、船盛りとかのどぐろとか食っただろ⁉」
そう叫びながら熊野は倒れ、うなされている様子だった。
烏丸「さっきの敷徳さんと同じ様子ですね…
敷徳さんと熊野さん、医務室で見て貰った方が良いかと。」
敷徳「はい、そうします…それにしてもこういう形で振り回されるとは。」
敷徳はあきれ果てながら熊野を見る中、牧子は語る。
牧子「ある意味怖いわよ男の嫉妬は、甘く見ると…」
敷徳「甘く見るとですか…牧子さんと文也さんの関係って何ですか?」
牧子「本当にバイト先の同僚よ、ただ彼は一夫さんが亡くなる期間に現場近くでバイトをしていたの。
一夫さんを殺した犯人が、文也君に気付いてたとしたら…
それに彼の年代では子供売りは禁止されたはずなのに、実行されていたのも…」(編集済)
二夫「彼は特別な事情があったのかな?村に置いておけないような。それにしても夜もバイトしてたのか。生活苦だったのかな?借金あったりして」
敷徳「受け入れ先には愛情込めて育てられたと言ってたが?」
敷徳は疑問に感じ県警にいる文也に連絡した。
(編集済)
文也「バイトの掛け持ちですか?借金じゃありませんよ。買いたい物があって貯めてたんです」
敷徳「どんなバイトだ?」
文也「工事現場の交通整理です。棒を振ってね」
敷徳「それなら野外作業か。犯人が見てたかな」(編集済)
文也「その際に雷太さんを目撃しましたが、彼には悪いことをしました。」
敷徳「他に気になった点はありました?」
文也「交通整理中に、見慣れないトラックを数台見かけました。」
敷徳「そうですか、ありがとうございます。」
敷徳は電話を終え、医務室に向かった。
敷徳「(診断から一時的な幻覚作用と妄想の発生か。
今は落ち着いたが、熊さんの発言は…今は事件の方に切り替えよう。
紗矢さんと真由子さんの両親がリストに無い原因が、正岡と関係があるとしたら…」(編集済)
敷徳「玲奈は紗矢と真由子と姉妹ではないのか?加奈を引き取ったのも姉妹なら納得できる。紗矢と真由子は両親(正岡)の側だから生き延びたのだ」
(編集済)
?「あの敷徳さん…」
声の方を振り向くと茜が立っていた。
敷徳「茜さん、大丈夫ですか?」
茜「私も兄さんも大丈夫…あのお願いがあるんだけど…烏丸さんと話し合いたい。
あの人は私が、一夫さんが殺したと疑っていると思う。
私自身も、あの人を疑っているけど…」(編集済)
敷徳「貴方は一夫さんと協力して村の闇を暴こうとした。烏丸さんは玲奈さんの敵を討つために村の闇を暴こうとした。やり方は違えど敵対するのは真犯人の思う壺ですよ」
茜「敷徳さんは誰が犯人だと思ってます?」
敷徳「一夫殺害については現場近くにいた雷太と文也はアリバイがあります。文也によるとトラックを数台見たようなので大型免許保持者が怪しいです」
(編集済)
茜「大型免許保持者は、あたしの知っている人の中にはいないわね。
現場近くにいた、熊野刑事も持っていさなそうだけど。」
敷徳「そこは分からないですが、僕は熊野は逆に犯人ではないと思っています。
僕をずっと見張っていたとしたら、逆に真犯人に口封じで殺されるのでは?」
茜「見張っていた…えっ何で呼び捨て?」
若干驚く茜の疑問に、敷徳は告げる。
敷徳「大広間の会話を見てなかったのですか?
原田さんと茜さんは加奈さん達とは違って、モニターで閲覧したのでは。」
茜「ああ地下に向かう時は、兄さんと見張りの警察の人と一緒に加奈さん達が心配で見に行ったのよ。」
敷徳「そうなんですか(熊野の事情も話すべきか…)」
茜「あと私は今の段階では烏丸と協力は無理よ、【水曜の時の人格】は烏丸の嘘だと思っている。
それに加奈さんの両親の話が出た時の、柿沢牧子の躊躇いも気になるから…」(編集済)
敷徳は熊野の正体を話した上で茜に頼んだ。
敷徳「茜さん、協力する必要はありません。ただ、皆さんの言い分を聞いてほしいのです。全員が言いたい事を言い尽くした後に真実はあります」
茜「分かったわ。でも熊野さんがそんな人だったなんて・・・気持ち悪い😨」(編集済)
敷徳「うーん…まあ僕の熊野への視点は、毒素の影響も残っていると思いますが。」
茜「そうなの…あっあたし兄さんと共に地元の県警の方に、大広間での参加の許可を取ってもいい?」
?「お二人とも、そこで何をしているの?」
牧子が茜と敷徳に問いかけている。
茜「あっ…ちょっとお話を(聴かれたかな、躊躇いの事。)」
牧子「別に私を怪しいと見ても構わないわ、ただ謝罪は一つあるわね。」
敷徳「謝罪とは?」
牧子「合成写真よ、4人ではなく烏丸さんとみちるさんの母親に変えた件の理由よ。
あなたが加奈をどう思っているか気になって…ついね。」
茜「(えっ、この人知っていたの加奈さんの気持ち?あと合成写真って…時々怖いのよねこの人。)」
敷徳「(あれってそんな理由だったのか、でも加奈さんは僕みたいなの嫌だろうな…)」
困惑する敷徳と茜にも動じず、牧子は語る。
牧子「あと桃香さんから敷徳さんに伝えたいことがあると、紗矢さんから聴いたんだけど…何かしらね。」(編集済)
敷徳「今から行ってみます」
敷徳は紗矢と桃香がいる待機所に向かった。
敷徳「桃香さん、紗矢さんから貴方が僕に伝えたい事があると聞いたので」
桃香「ええ」(編集済)
桃香「あの、餃子についてです。
父の死後の後、母がシク村長と水仙について語っている話を聴いたんです。」
敷徳「まさか水仙を加えた人物は。」
桃香「シク村長は、きっと父が邪魔だったんだと思います…でも母が協力した理由が分からなくて…それに…」
紗矢「桃香さん?」
桃香は怯えて震えていた。
敷徳「大丈夫ですか?」
桃香「真犯人は…自分が不幸になっても構わない…この事件もただの余興としか思っていない化け物…でも私は違う…私は…」(編集済)
敷徳「僕が不思議に思うのは、そんな化け物がこの中にいるのでしょうか?自分が不幸になってもいい自己犠牲の愉快犯なんているのか?今までの証言を振り返っても、みんな自分の利益を追い求めて悪に染まってます」
桃香「母は欲に負けて父の殺害を手伝う人では無いです。欲に負けない村人だっています。貧しくとも農業で自給自足はできますから」
敷徳「うーん。だとしたら犯人が演技し続けてるのか」
(編集済)
桃香「あとこれは恥ずかしくて言えなかったのですが、一夫さんの亡くなった日、私にはアリバイがあります。」
敷徳「恥ずかしい事とは?」
桃香「高級ホストクラブで…酔い潰れていました…県警の方には既に伝えました。」
敷徳「ああ…うん?」
桃香「母が生きていたら叱られますよね、あの何か?。」
敷徳はあることに気づく。
敷徳「そうなると貴文さんのアリバイは?」
紗矢「確か、都内で会合でしたよね?」(編集済)
桃香「会合は首長夫妻でパーティの後に、首長だけで会議をしたんです。だから私は時間が空いたんでホストクラブに」
敷徳「桃香さんは犯行時刻の夜中までホストクラブか。貴文さんは会議が終わった後、何処にいたんだ?寝る時間まで会議は無いよな」
(編集済)
桃香「村には翌日戻りました。同じホテルに泊まったのですが別室しか取れなかったので、彼がどうしてたか分かりません」
敷徳「首長の集まりなら、ホテルで部屋は用意されていたのでは?」
桃香「用意はされていたのですが、お互い2人で同じ部屋は嫌だったので。
あの人は、唯さんにしか愛情無いから。」
紗矢「・・・・・・」
紗矢の考え込む表情に、敷徳は見ていた。
敷徳「(唯さんで、気になる点があるのか?
そして玲奈さんとの関係も…)」
重苦しい空気の中、平田が来る。
平田「皆さん、そろそろ大広間の方に。
あとみちるさんも、大広間に合流するので。」(編集済)
敷徳達は大広間に戻った。
敷徳は貴文を見つけると先程の疑問をぶつけた。
貴文「俺はホテルに直行してシャワーして寝たよ。疲れたからな。チェックインの記録があるだろ。それに大型免許も持ってないし」
貴文は免許を見せた。
敷徳「ふ~ん確かに。あー皆さん!運転免許を見せてくれませんか?」
敷徳は一人一人免許を確認していった。
(編集済)
敷徳「(大広間以外のメンバーでは雷太君が持ってはいるが、彼にはアリバイがある。
烏丸さん、真由子さん、紗矢さん、加奈さんは免許自体は持っていない。
大型車免許を持っていたのは…)
牧子「仕事上から持つのは当たり前でしょ、まあ年齢的にそろそろ返納するけど。」
茜「資格の一つとしてね、興味があったから。」
敷徳は地元の県警及び平田と共に考える中、烏丸が告げる。
烏丸「みちる、君は別室に待機しているのでは?」
みちる「地元の県警の方に頼まれたんです、【水曜日の人格】が記載されている日記のロック解除を。
そして私は一緒に住んでいましたから、あなたの証言も必要だと。」
烏丸「君がここにいる事は、パスワードは…」
みちる「苦戦しましたが解除はできました、あと熊野さんから大広間での話を聴きました(熊野さん怖いけど…)
私の両親はどうなったのか…一郎さんは知っているんでしょ?」(編集済)
烏丸「お母さんは分からない。牢獄にいる姿を見たのが最後だ。お父さんはお母さんの証言から玲奈の両親(正岡)に殺害されたみたいだ」(編集済)
みちる「本当に分からないの?」
烏丸「正直に言えば、【水曜日の人格】の日記が気になっている。
あいつがこれまで何をしたのか…もしかしたら私は…」
烏丸の表情には葛藤と覚悟が見え始めていた。
敷徳「みちるさん、知りたくもない事実も今後あるとは思いますが…それでも参加しますか?」
みちる「大丈夫です…それに一郎さん以外にも気になる事があるので。」
みちるの表情にも強い覚悟が感じられる中、烏丸は語る。
烏丸「玲奈が亡くなった後から話そう、私の記憶障害が起き始めたのは玲奈が亡くなった後。
あの頃から自暴自棄と並行して、物忘れなど初期の認知症にも似た症状が起き始めた。
その後…うん、PCの日記の資料か…これは…」
?[この日だけが俺は自由に動ける…玲奈・加奈、お前達の仇は必ず取る。
悪魔に魂を売ってでも…村の奴ら全員に復讐を…](編集済)
貴文「これで決まりだな。烏丸の別人格が真犯人だぜ。一夫殺害は別人格の烏丸が殺ったんだ」
敷徳「一夫君は村の闇を暴くために動いていた。烏丸さんの復讐相手じゃ無いだろう。むしろ仲間に引き込もうとするんじゃないか」
(編集済)
茜「味方というより、駒として利用する可能性の方が高いんじゃない?
それにまだ真偽つかないでしょ?」
貴文「その可能性も…あんたも同じ視点か。」
茜と貴文のやり取りに、原田は黙りつつもやり切れない様子だった。
平田「以下の内容も強い恨みが綴られましたが、ある日を境に進展がありました。」
[常設展示されている、美術館の公式サイトに奇妙な書き込みの報告があった。
どうやらそいつも村に恨みがあるらしく、一度俺に会いたいと言い出した。
そいつは柿沢牧子という女だった。](編集済)
【俺は興味を持ち美術館の裏で会う約束をした。当日、行ってみると年配の女性がいた。話を聞くと自分が正岡一味だった事、玲奈の事で失望して独立した事を語った】(編集済)
[俺はこの女に対し、強い怒りがこみ上げた。
所詮正岡が怖いだけで自分が可愛いだけだろうという思いから、殺意も高まり始めた。
だが女は淡々と俺に告げた。
「加奈は生きている、あなた以外にも村を憎む同志はいると。」]
牧子「・・・・・・」
[信じられない気持ちが強かったが、女は俺に写真を見せた。
それは幼い少女と、玲奈が殺された時に牢獄にいた女が一緒に写っていた。
女は「烏丸さん…村へ一緒に行きましょう、加奈に会いたいなら。」](編集済)
【俺は村に行く事にした。加奈は旅館の離れに隔離されて暮らしていた。女は加奈に先生と呼ばれ慕われていた。そんな二人を俺は遠目に見ていたが、意を決して笑顔で近づいた。「加奈ちゃんだね」しかし加奈は見知らぬ男の人に声を掛けられ警戒し、女の後ろに隠れた】(編集済)
[加奈は「まさつぐ君、遊ぼう」といい、離れの近くにいた青年の方に向かっていった。
牧子は俺に「知らないおじさんと思われたのかしら…」と俺に哀れみを見せた。]
敷徳「まさつぐ君か…牧子さん以外で会えたのは…」
敷徳は考え込みつつ、資料の続きを読む。
[俺は牧子に連れられる形で診療所に着き、そこで牢獄にいた女と再会した。
女はまるで老婆のようで昏睡状態だった。
近くには玲奈と俺とこの女と夫の4人の写真、そしてみちるへという手紙が置かれていた。]
熊野「みちるの母は生き延びたのか」
敷徳「手紙を書く力は残ってたみたいだ。牧子の写真があるという事は助けたのは牧子か」
【牧子は玲奈の両親(正岡)から独立する際に、みちるの母を脱獄させた。牧子は正岡の弱みを握っており、正岡は従わざるを得なかった】(編集済)
[牢獄にいた女は目を開け、彼女は俺に気付いたのか「烏丸君なの?ごめんなさい…」とか細い声で語った。
「あの当時主人と私は…村で親友と呼べる人達ほとんどが…村長達に逆らい…消えていった…
でもあなたが来た時…久しぶりに人の温かさを感じたの…それは玲奈さんも同じ…]
牧子がもう無理しないでいいと彼女に語り、近くにいた若い着物の女も彼女の介抱を手伝っていた。」
紗矢「・・・・・・」
[ほとんど会っていないのに…彼女がそういう思いを持っていた事に、俺は複雑な感情を抱いていた。
その直後彼女は、俺達に懇願する形である事を願った。
「産まれた直後に…離れ離れになったみちるに…会いたい…赦されなくてもいいから…」
彼女はそう語った直後に亡くなった…]
みちる「・・・・・・・」
牧子「その翌日の木曜…主人格である烏丸さんが目覚めて、私は一連の事を説明したのよね…」(編集済)
烏丸「僕はみちるを探す事を決意したんですが、転々と売られており居所を掴むのは困難でした。そして結構な年月が過ぎました。僕は四十を過ぎ、独身でいるのが寂しくなり婚活に励むようになったのです」
(編集済)
一同が婚活を疑問に思う中、貴文が語る。
貴文「こんな時に冗談か、二重人格者。
あんたと若い時に会った時は、どっちの人格だったか…」
何かに気づいて青ざめる貴文。
烏丸「そう…君は組員時代に私と会った、桃香さんと共に。
そして…そこにはみちるもいた。」
敷徳「烏丸さん、今のはわざとですか。」
烏丸「ああ探る途中で、みちるは見つけたんだが…」
烏丸は悲しげにみちるの方を見る。
みちる「あれ…私はその時…」
烏丸「みちるの記憶障害の真の原因を…君は知っているんだろ?」(編集済)
貴文「ああ。原因は山中すばるだよ」
(編集済)
敷徳「山中すばるが何故?」
貴文「俺が上京した際に拾われたんだよ。
それからは生きる為に、組員として…」
烏丸と牧子は無表情に貴文を見つめる。
貴文「だけどそこで活動しているのが、親父と母さんにバレたんだ。
2人は俺に「山中を裏切って村の仕事をして欲しいって…」
その後山中が集めた…身寄りの無い少年少女の中にみちるがいて…
親父にその事を言ったら、みちるの親と同じように実験体にしろって…」(編集済)
貴文「密かにみちるの食事に花の粉末を混ぜて。しかし、すばるに見つかっちまった」(編集済)
貴文「意図を話すとすばるは意外にも賛同し、他の少年少女にも行うよう提案してきた。シクトク病利権を山分けしようとね。そうして多岐にわたる実験を行い、様々なデータを集めていった。少年少女は過酷な実験で命を落としていき、みちるだけが生き残ったのさ」
(編集済)
二夫「人間のやる事なのか…それって。」
牧子「【久志吐の花】に魅了された時点で、人間の心を失ったのかもね…あいつらは。」
敷徳「貴文さん、恐怖で逆らえなかったとしても…別の方法を考えなかったのですか?」
貴文「お前に…何が分かるっていうんだよ。」
憤りを抱えつつも敷徳は設問をするが、貴文は敷徳に叫んだ。
貴文「俺に取って、幼い頃から親父と母さんは恐ろしい悪魔だった…
なあお前らは、親に殺されそうになった経験はあるのか?
その親父から逃げる為に上京したのに、親父の昔の仲間に掴まって…
俺の人生は生まれた時点で呪われているんだ…桃香、お前なら分かるよな?」
桃香「・・・・・・」
荒れる貴文をどこか憐れむように見る桃香、そして医務室にみちるを移動させた紗矢が語る。
紗矢「あの質問があります…山中すばるは正岡夫妻とも手を組んでいたのですか?
そうなると姉さんと同じように、みちるさんにも人格形成を…」(編集済)
牧子「正岡夫婦と一緒にいる所は見たことないわ」
貴文「俺も。ただ闇社会は狭いからなぁ」
敷徳「茜さんは今のみちるをどう思う?売られる前の幼い頃に遊んでたんだろう」
(編集済)
茜「みちるとは年は離れていたけど、姉妹同然の関係だったわ。」
敷徳「それは施設にいた時ですか?」
茜「ええ、そうよ。」
原田「茜…以前僕が最初にみちるさんと会った時、彼女とは村で仲良くしたと言ったよね。
でも今は施設と…何故だ?」
自分を疑う兄の問いに、茜は対応した。
茜「あの時はみちるに合わせたのよ。
ねえ…こんな花以外で、人格や記憶を操作する奴らを兄さんは信じるの?」
敷徳「花以外で人格や記憶を操作をする…そんな話、今まで出てませんよ茜さん。」(編集済)
茜「えっ?」
敷徳「貴方は何者です?」