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クロエはウォルフ警部の尋問に動揺しつつも、自分の知っている限りのことを語った。 クロエ「ウォルフさん…私は行方不明の件についても、知らないです。 ただ…あのハンナだけじゃなく、妹のエマちゃんの行方も分からないのですか」 ウォルフ「そうですね、妹のエマさんも同じく行方不明です…ところでクロエさん。 貴女、ゲーファルトさんの事はあまり気にかけないのですね」 ウォルフ警部の突然の疑問に、クロエは一瞬暗い表情を浮かべる。 ウォルフ警部はクロエの変化に気づき、彼女の死角に潜むランプの変化を確認し、笑みを浮かべた。 ウォルフ「やれやれ…もう演じなくていいと分かれば、気が楽だわ。 じゃあ、これからはいつも通りにやるとするから覚悟しろよ…お嬢ちゃん」 荒ぶった口調でクロエを睨みつけながら、自らの本性を見せるウォルフ警部。 そしてそれを何故か楽しんでいるように、呑気に眺める女性刑事。 この映像は署内でも流れ、1人の刑事は周囲とは離れた場所に行き、携帯から様子を報告していた。 ゲオルグ「ブルーノ君…本当にあの2人がクロエさんの取り調べをしているのかい」 ブルーノ「はい、ヴィルヘルム君の方も、ウォルフ警部直属の部下が担当しています。 先輩、僕は正直…もう憤りしかありません」 ブルーノの状況を察したゲオルグ警部補は、警察・事件の加害者に強い怒りが芽生え始めていた。 ゲオルグ「そうか…ブルーノ君、もしもの時は警察内の協力者と共に…クロエさんを頼む。 ブルーノ「分かっています…ところで警部補は、今どちらに」 ゲオルグ「私はね…すまない一旦かけ直すよ」 そう言ってゲオルグ警部補は携帯の電源を切り、室内を見渡した。 ゲオルグ「やはり昨日ヴィルヘルム君の言った通りか…嗚呼驚かないで、ちゃんと許可は取っています。 えーと…貴方が式典とマグダレナさんの爆破事件に関わった1人ですよね。 ガブリエラ・ラインハルトさん」
ガブリエラ「何なんですかあなたたち!」 ゲオルグ「これは失礼、警察のものです。パーティー会場での爆破事件について捜査を。少しお話お聞かせ願えますか?」 そう言って警察手帳を見せるゲオルグ。 ガブリエラ「バイアスロンのパーティーですよね。私は出席してませんけど」 ゲオルグ「はいそのようで。ただガブリエラさんは化学の知識も豊富にあるそうで、爆発物に関してお詳しいんじゃないかなと思いまして。操作が行き詰まってるものですからどうかお知恵をいただけたらなと」 ガブリエラ「・・・これから仕事へ行くんです。忙しいのでお断りしますわ」 そう言ってゲオルグをドアの外に追い出そうとするが、ゲオルグは両手で壁に突っ張り外に出ないようにしながら ゲオルグ「あなたヴィルヘルム君ともかなり親しいそうですね。ヴィルヘルム君はずいぶんあなたのことを信頼しているようだ。教材室でよく2人が仲良さそうに話すのを見たという方が何人もいらっしゃいました」 その言葉に少し気を良くしたガブリエラ ガブリエラ「え、ええ。彼はとても勉強熱心でよく授業についての意見交換をしていましたわ」 (編集済)
ガブリエラは話の途中、ゲオルグ警部補に向かってこう言った。 ガブリエラ「あのゲオルグさん…ずっと立っているのもお辛いでしょう。 こちらの方に座ってください」 落ち着きを取り戻したのか、温和な口調でゲオルグにソファーを勧めるガブリエラ。 ゲオルグ「お気遣いありがとうございます、でも立っているのは警察としては慣れていますので」 ゲオルグは会釈しながらも断った。 ガブリエラも会釈した後にソファーに腰かけて、ヴィルヘルムの事を語り始めた。 ガブリエラ「そうですか…私はノヴァク君の悩み相談もしていました。 世界大会の個人代表に選ばれたノヴァク君に対し、同じチームからは嫉妬や妬みがあったようです。 でもノヴァク君はそれに屈せず、世界大会での個人優勝を…彼の実力で成し遂げたのですよ! 私は世界大会の試合を現地で観戦したのですが、本当に凄かったんだからヴィル君」 ヴィルの事を語るガブリエラはどこか幼さも見せ、彼に対して教師とは違う想いが見え隠れしていた。 ゲオルグ「ガブリエラさん、貴女のその生徒を思う熱意は十分に伝わります。 ただ…そこまでの熱意がある貴女が何故、式典の会場にはいなかったのですか? 貴女と同じ職場の先生方は、全員参加していたのに」 ゲオルグの追及に、内心ガブリエラは動揺を見せる。 ガブリエラ「ごめんなさい…その日は体調が悪くて…欠席していまして。 あの…先ほども言いましたが、仕事があるのでこの辺でよろしいでしょうか」 ガブリエラが立ち去ろうとした瞬間、ゲオルグ警部補はどこか憤りを浮かべた表情で、彼女の前に立つ。 ゲオルグ「ガブリエラさん…学生が事件の被疑者になった際、一般的に教師の方々は学校に待機します。 なのに…何故、貴女は今ご自宅にいらっしゃるのですか? そしてヴィルヘルム君は昨日、私達に言っていました。 式典当日に、ゲーファルト氏がご自宅でクロエさんに襲い掛かろうとした画像と爆破装置が送られた事。 そして式典の爆破直後…ガブリエラさん、貴女を会場内で目撃したと」(編集済)
ガブリエラ「・・・それが何なのでしょう。爆破装置なんて私は知りませんし、パーティー会場で私を見かけたと言う証言が本当かどうかわからないじゃ無いですか。学校に行っていないのも体調が悪いからだとお話ししましたわ。」 ゲオルグ「あー、そうでしたね。失礼。たしかに証言だけで何の証拠もありません」 ガブリエラ「私が爆弾魔だと疑ってらっしゃるの?化学の知識がある者なんて大勢いますし、それだけで疑うなんてずいぶん安易ですのね」 ゲオルグ「いやいやお恥ずかしい」 ガブリエラ「さあ、もう帰ってください」 そう言ってもう一度ゲオルグをドアの外に追い出し、バタンとドアを閉め鍵をした。
ゲオルグ「失礼しました、ガブリエラさんにも失礼な真似をしたと伝えてください。」 ゲオルグ警部補は執事に伝えた後、自らの車に乗り込んでラインハルト家から去った。 ゲオルグ「証拠ね…ならば次に会った際にどれを先に出すか。 それを決めないと、いけないか」 ゲオルグ警部補は式典の爆破に使われた、火薬の資料を読み込んでいた。 ゲオルグ「式典の爆破の火薬は、エスターライヒ家の火災の原因の物と似ている。 鑑識の結果によっては…」 そしてゲオルグ警部補は携帯で撮影された、式典での花束贈呈の動画を見ていた。 映像には無数の人の歓声が聞こえる、彼は鑑識に動画の音声解析を依頼した。 その結果、一人一人の声が正確に聴こえ、ゲオルグはその中のある声が気になっていた。 ?「きゃーヴィル、お願いこっちにも気づいてー」 ゲオルグ「やはり、ガブリエラさんの声か… だが彼女の勤める高校の人達は、何故か彼女は式典は欠席だったと全員が語る…根回しか」 ゲオルグ警部補は今回の事件について、いくつかの介入が気になっていた。 ゲオルグ「ただ…最初の様子見としてこちらに伺ったものの、収穫はいくつかあった。 次の段階として、花束贈呈に参加した子達にも話を伺おうとしますか。 あの子はいないとしても…式典の爆破の瞬間を投稿したのかも聴くとしますか。」 ゲオルグ警部補は、ハンナ・リオニ・エミリア・ヴィルが撮影されている花束贈呈の写真を見ていた。
保守
保守です
エスターライヒ邸の爆破事件から1週間が経ったが、捜査に進展は見られなかった。 クロエもヴィルも街も、平穏な日常を取り戻していた。 (編集済)
クロエとヴィルは証拠不十分で釈放されるものの、2人の環境は変わりつつあった。 ヴィルは学校に停学処分が出され、父の手伝いを現在はしている。 昔は明るい兄であったが、釈放後は口数が少なくなった。 そして彼が犯人だと訴えかけていた、ガブリエラは今も学校で働いている。 一方でクロエの方にも変化はあった。 リオニは変わらずに自分に接してくるが、エミリアはどこか自分を避け始めていた。 そしてクロエ自身は取り調べ後の影響から、カウンセリングを受けている。 一方でゲオルグ警部補は、ある人物のいる場所へと向かっていた… ゲオルグ「さて…この情報は本当に真実なのかね? まぁ…真実じゃなくても、真相には確実に近づきそうだけど」
ゲオルグが例の場所に着くと、先にブルーノ君が着いて待っていた。 ブルーノ「ゲオルグさん、ここはいったい何なんですか?薄暗いし湿っぽいし。なんだか薬品のような匂いがして気味が悪いですよ」 ゲオルグ「ここはね、行方不明になったハンナの父親が働いていた場所だよ。」 ブルーノ「え?彼は外交官とかお堅い仕事をしていませんでしたっけ?こんなボロボロの倉庫で何の仕事を?」 ゲオルグ「みてごらんこの部屋の中を」 ゲオルグが地下に続く部屋のドアを開けると、そこには夥しい数のハンナの写真が壁一面に貼られていた。 生まれた瞬間から現在までの記録だ。 ブルーノ「うわぁ、娘さんを相当溺愛してたとか?それにしてもここまでするのは異常ですね。で、これと爆発事件なにか関係が?」 ゲオルグ「関係なんて無いよ。でも気になるんだよねぇ。妹さんは国立病院に入院していたね。彼女に話を聞きたい。さあ行こうブルーノ君」 (編集済)
?「もう…ご飯なんて、いらない…おうちに帰りたい」 病室内では、1人の患者の憤りとも思われる声が聞こえていた。 看護師「エマちゃん、しばらくはあなたの退院許可が得るまでは、お家には帰れないの。 それに食事メニューはあなたの健康面を考えてだから…ごめんなさいねエマちゃん」 フランツ「エマちゃん…じゃあ何かお願いはあるかな? 先生はエマちゃんの頼みなら、何だって叶えられるんだよ」 困り果てる看護師、そしてフランツはエマを優しくなだめていた。 エマ「叶えられるって、じゃあ…いつになったらパパやママ、お姉ちゃんはエマに会いに来てに来れるの? どうせフランツなんて…嘘つきだから…信用なんてできない…」 そう言ってテーブルの上にある、野菜ペーストの入った皿をフランツに向かって投げた。 エマ「エマの友達は…モカちゃんだけ…モカちゃんだけは…いつも一緒だから」 そう言って入院前に持ち込んだぬいぐるみのモカを抱えて、シーツで体を覆い、2人の視線を遠ざけた。 フランツ「あっ、エマちゃん…先生、次の患者さんを見ないといけない時間みたいだ。 また部屋に来るからね…ごめん」 看護師に視線を送り、病室を出るフランツはエマの経過ファイルを見ていた。 フランツ「エマの肉体は完全に完治した…だが精神は日に日に… 完璧じゃなかったのか…哀れな娘だ…ただ、今はそれよりも」 ぶつぶつと心の中で愚痴をこぼすフランツを、ある人物は見ていた。(編集済)
保守です。
保守
エマの枕元に立ちフランツを見つめる者。そらは精霊体となったハンナであった。 青白く透明に光るその姿は、人間には見ることができない。 ハンナは冷たい眼差しでフランツを見つめていた。 ハンナ[フランツ、これがうまく行ったと言えるの? 神になったのは私なの?エマなの?]
ハンナ「でも不思議ね…この肉体になってから…人間だった時の怒りが薄れている。 でも私の行動は…お母様ごめんなさい…何で…クロエにあんなことを」 ハンナはこの肉体になったことで、己の罪を後悔し始めていた。 ハンナ「クロエに…謝りたい…もう遅いのはわかっているけど… それでも…」(編集済)
怒りはなかなか収まらない