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考え込む敷徳達に、桃香は告げる。 桃香「あの烏丸夫妻は協力者の振りをして、あなた達を利用していると思います。 あの夫婦は、【久志吐村奇譚】を公にされたくないんですよね。 秘密を探る者なら命をもと考えているから、茜さんもこのままじゃ。」 原田「ふざけるな…」 電話口から原田の怒号が聴こえる。 桃香「原田さんって怒る事あるんだ…でも朗報もあります。 烏丸先生はシクトク病感染者だから、ワクチン接種の治療の為に、みちると共に今日紅琥村に来ますよ。」
原田「真っ暗だな、明かりはどこだろうか。」 ?「うーん…」 原田は屋敷内を探ろうとした際に、かすかな声に気付く。 原田「その声は、茜か。」 原田は声の聞こえるドアに向かった。 原田「茜、大丈夫か?」 茜「その声は兄さん、中からだとドアが開かなくて。」 原田「鍵はこの中か…茜待っていろ、今開けるからな。」 原田は近くにある鍵束から、鍵を見つけてドアを開けた。 原田「茜…お前が無事で本当に良かったって、何だこの部屋は?」 茜「兄さんも変に感じるよね、この部屋の事。」 茜が閉じ込められていた部屋は、トイレとシャワー室が完備されている窓の無いワンルーム。 そこには非常食とミネラルウォーター、そしてパソコンが一台置かれている。 原田「このパソコンは、はっ?」 パソコンの画面からは分割される形で、シクトク村と紅琥村の映像がLIVEという形で流れていた。(編集済)
茜「本当にごめんなさい、兄さん…敷徳さん達にも謝らないといけないよね。」 原田「単独行動はもう辞めて欲しいよ、本当に心配だったんだから。 とりあえず、今は早く外に出て敷徳さんに伝えよう。」 茜「ねえ兄さん、私の部屋の鍵はドアの付近にあったのよね?」 原田「ああ、そうだけど…あれ何であんな近くに、それに窓も何で一部開いていたんだ。」 考え込む原田に、茜は告げる。 茜「兄さん、たぶん烏丸夫妻はこのPCの映像を見せる為に、私を閉じ込めたと思う。 助けに来る人にも見せたいから、窓も開けたんじゃないかな。」 原田「わざとって、何で?」 茜「烏丸一郎が言っていたの、伝染病が治っても本当に幸福になれるのか? 自分はともかく忘れた方が良い人もいる…だから多くの人にこの村の真相を知って欲しいって…」(編集済)
烏丸は続けざまにメモをした。 [村の隠しカメラは、僕らはつけていない。] [僕らはシクトク村を検索している時に、この映像が配信されているサイトを見つけた。] [多分カメラを付けたのは、あの人だと思う。] [あっ音声が聴こえるように、設定変える事はできる?] [後、野球帽とスーツって合わないかな?] 茜「途中からのメモは何なの?」 原田「挑発なのかね。」 烏丸の状況に、困惑する2人。 近くで呆れていた様子のみちるが、烏丸の代わりに監視カメラからメモを出した。 [原田さんと茜さんは、屋敷を出ても構いません。 ただこの映像の配信は、シクトク村及び紅琥村の未来に大きな動きを及ぼすと思うので。 だからこのサイトのURLとパスワードを今から送りますので、配信は続けて見て下さい。 あと井上一夫の件は、桃香から教えてもらった探偵の方に直接伝えますので。](編集済)
烏丸「もしかして、茜さん達の言っていた方ですか?」 敷徳「はい、敷徳という探偵です。」 烏丸「僕のワクチン接種の理由ですよね? 伝染病に気づいたのは、僕が大樹を描く前だったかな? 新しい題材を考えていた時に悪友の貴文から、この村を紹介して貰ったんです。 それでこの村に来たのですが、シクトク踊り?という音楽が流れて。 その瞬間、僕は無意識に踊ってしまい、村の人達が騒ぎ始めて。」(編集済)
みちる「もう協力したくないんです。 だから…怖いよ。」 烏丸の後ろに隠れて、怯える様子のみちる。 みちる「茜さんの監禁も桃香さんに脅迫されて、探る奴らは全員閉じ込めろって…」 桃香「嘘よ、そうだ鍵はあんた持っているでしょ? 貴文さんから聴いたわよ。」 みちる「鍵…えっ貴文が預かっているんじゃ?」 貴文へ何らかの疑問点が浮かぶ二人。 敷徳「揉めている事悪いのですが… 一夫さんの事についてのお話も聴かせてくれませんか?」 (編集済)
敷徳「二夫さん、落ち着いてください。」 敷徳の呼びかけにも、二夫は荒れる様子で烏丸に掴みかかろうとする。 二夫「烏丸先生、あなたは以前兄に会ったことありますよね? そしてあなたは、ある宴席の会場でシクトク踊りを踊っていたことも俺達は知っている。 頼む真実を話してくれ、兄は何で…」 二夫は膝から崩れ落ち、うっすらと涙をこぼした。 烏丸「そうか…もう正直に話そう。」 みちる「あなた?」 烏丸「僕が久志吐村の全てを終わらせる為、シク村長・貴文・桃香…みちるの仲間を演じたこと。 だがそのせいで僕の協力者であった、一夫君が巻き込まれて殺されたことを。」
敷徳「意外な場所というのは?」 烏丸「向かえば、分かります。」 桃香「あの、久志吐村奇譚を早く返してくれないかしら。」 敷徳「事件が解決するまで、書物は預かります。 それに桃香さんとみちるさんも一緒に来てくれませんか? あなた達を放置させるのは不安なので。」 敷徳は桃香に呆れつつ、烏丸・二夫と共に地下道のある場所に向かおうとする。 桃香はいやいやな雰囲気を漂わせつつ同じ方向に向かうが、みちるは立ち尽くしていた。 みちる「私は…本当にあなたを愛していたのに…」 烏丸「君に対しては、正直なところ謝罪の思いも強い。 だけど君は、貴文や桃香と同様に更生はしなかった。 あの親達と同様に。」 みちる「親か…」(編集済)
敷徳「すみません、地下に入る前に原田さん達に連絡しても良いでしょうか?」 烏丸「大丈夫ですよ。」 敷徳は烏丸達とは離れた場所から、連絡をした。 原田「どうかしたんですか?」 敷徳「原田さん、貴文氏がいる部屋はそちらからは見えますか?」 原田「はい、見えますけど。」 部屋は貴文の他に、貴子・紗矢・真由子・加奈・雷太・熊野刑事も含めた警察関係者、他の患者と思われる方々もいる。 敷徳「中の様子はどうですか?」 原田「貴文氏は外国の方と話していて、貴子さんは離れた場所にいます。 紗矢さんと真由子さんと加奈さんは緊張から暗い感じで、雷太君は慰めているかな。 あと熊野刑事は…」 原田が答えようとすると、敷徳から思いがけない言葉が出てきた。 敷徳「熊さんは…本当に僕らの仲間なんですかね?」(編集済)
敷徳「そしてシク村長が亡くなる前に、熊さんは一時的ですが僕らから離れていました。 熊さんは…もしかしたら毒を入れる可能性は高かったんじゃ?」 原田は敷徳の様子にどこか不安を感じつつ、彼に尋ねた。 原田「でも熊野さんは、敷徳さんとは親しい関係ですよね。 僕達よりもどういった人物か、敷徳さんが一番知っているはずでは?」 敷徳「僕だって、疑いたくないですよ。 熊さんとは長年の付き合いですし、色々な事件の捜査にも協力してくれた。 だけど…茜さんが消えた連絡に関しても。」 二夫「敷徳さん、そろそろ…」 二夫の呼びかけにも気づかない、敷徳の焦りと思いつめた様子が、電話口からも伝わる。 茜「兄さん連絡している相手って、敷徳さん?」(編集済)
茜「烏丸先生の自室からは、日記帳が出てきたわ。」 原田「記憶障害の影響かね。」 茜「あとみちるの部屋には、見たこともない花の鉢植えがあったかな。 ところで敷徳さんさ、熊野さんの事を何で疑うの? もしかして、シクトク病の人達を犯人から除外している?」 茜の問いかけに敷徳は答えた。 敷徳「それは…」 敷徳は何故か黙り、茜はその様子をどこか寂しげな表情を浮かべて返答した。 茜「敷徳さん、それじゃ駄目だよ。 そもそも私が村のメモを持っていた事を、不思議に思わなかった理由は私が施設にいたから? その同情という視点が、二夫さんや感染者の人達にも向けられているんだったら… それは捨てた方がいいよ。 敷徳さんは、この事件を解決したい事で焦り過ぎているし、甘すぎる所があるよ。 だから混乱しすぎて…ごめん言いすぎたよね。」(編集済)
茜「花の写真と日記帳の内容、まとめて置きますね。」 二夫「あの敷徳さん、大丈夫ですか?」 二夫の呼びかけに会釈し、敷徳は茜と原田にお礼をした後、地下の中に入った。 烏丸「全員が降りれたようなので、懐中電灯を付けますね。」 桃香「あの私は行きたくないんだけど。 ちょっと、みちる腕引っ張らないでよ。」 無表情で黙ったまま、嫌がる桃香を烏丸の方へ誘導するみちる。 二夫「みちるさんは、どう考えましょうか。」 敷徳「彼女の烏丸先生の思い、そして桃香さんとは何かありそうですね…色々と。 それにしても、地下道と言っても酸素は薄くないような?」 地下道を歩く中、烏丸が立ち止まる。 烏丸「もうすぐ、取引が行われていた場所に着きます。」 烏丸がそう告げた後、桃香とみちるの方を見る。 みちる「私の方ならいいよ、この人達に見せても…」 桃香「本当に見せるの、ねえちょっと辞めて分かっているの?」 どこか諦めたみちると怒りを見せる桃香という、対照的な二人に動じず、烏丸は歩き出す。 敷徳「あれは…」 烏丸「あれが取引に使われた物、そして伝染病の原因となった物です。」 それは茜が言っていた、グレーの星形の花であった。(編集済)
敷徳「烏丸さん、この花が伝染病の原因というのは一体?」 烏丸「シクトク村と紅琥村の大樹の色に、わずかな変化があるんです。」 二夫「確かシクトク村はどこか黒ずんでいて、紅琥村は光沢のある色合いだったような。」 烏丸「その色合いの違いは、花からわずかに噴出される毒素からです。 その毒素から地盤の地質異常が生まれ、伝染病が発生したと。 昔は村を分断させる事で、その毒素を抑えるのが現状だったようですが。」 敷徳「元凶の花を無くさずにか…」 烏丸「そして、この花の異変に最初に気付いたのは私の旧友である植物学者…彼は二夫さんの父親です。」(編集済)
烏丸「いえ、毒素の影響を受けるのは【余所者と結婚して出来た女の子】、【双子の母親】。 そして少数ですが【父親が双子の子供】が現在の感染者になります。 感染しても記憶障害と踊り狂うだけなので、自覚症状が無いという事例もあります。」 敷徳「あの、【父親が双子の子供】って?」 烏丸「ええ、これは外国の感染者に多く、日本では少数しかいません。 私がその一人ですが。」 敷徳「(海外にも症例者がいると、貴文氏は言っていたか。 そういえばみちるさんの部屋にある花が、この花でも彼女に影響は無いのか?)」 みちるの方を一瞬見つつ考え込む敷徳、烏丸は敷徳の様子に気づきつつも、続けて語る。 烏丸「話を戻しましょう、一夫君は両親の死の真相を探る為、僕の方に訪ねて来たんです。 自分一人で真相を知りたい、弟には迷惑かけたくないからと。」(編集済)
敷徳「困る人間というのは、シク村長以外だと…」 烏丸「紅琥村の前村長と、仲介役を行っていた者。 その人物の名前は山中すばる。 彼はセミナーの主催である、山中タケルの祖父です。」 二夫「もしかして兄がセミナーに入ったのは?」 烏丸「久志吐村について知っていると思い、近づいたのでしょう。 僕も山中タケルを調べたのですが、彼よりも勉強会の主催者が気になりましてね。 敷徳「勉強会の主催者?」 烏丸「その人物は勉強会の参加者から、絶大な信頼を得られていました。 そして宴席での僕の踊りを見て、「懐かしいね」と言ったんです。」(編集済)
烏丸「そろそろ、出口の方に着く頃か。」 敷徳「やっぱり村長の家なんですかね?」 桃香「(出口出たら、すぐに貴文さんの方に逃げよう)」 敷徳「(桃香さんは、見張っておこう。) あと地下道から出たら、茜さん達の情報が来るかな?)」 二夫「貴文氏の動向も気になりますよね。」 みちる「(見捨てられるぐらいなら…)」 それぞれの考えが交差する中、烏丸が出口のドアを開く。 敷徳「ここは書斎ですね。 あの烏丸さん、あれは?」 烏丸「あれは…僕も初めて見ますね。」 壁には「愛しき、唯」と題された、拡大された幼い少女の写真が壁一面に飾られた。
烏丸「一夫君のご両親以外にも唯さんのご両親、茜さんのご両親も協力をしてくれました。」 敷徳「事件関係者で、亡くなった方が多いですね。 正造さんも、協力者だったと考えても良いか。」 そう言う敷徳に烏丸は、疑問を浮かべる表情を見せる。 烏丸「正造さんという方は、加奈さんのお父さんですよね。 何故、今その方の名前が?」 敷徳「彼も、現状では不審死となった1人ですが?」 烏丸「それは知っています。 ただ、彼は協力者では無かったかと。 謎が多い人ではありましたが…」(編集済)
敷徳は、桃香を護身術の要領でケガをしない様に倒れさせつつ、桃香の腕を抑えている。 桃香「あんた、何するのよ。」 敷徳「やりすぎたとは思いますが、その手に持つ物の説明をお願いします。」 桃香は、唯の家にあったと思われる小さな花瓶を握っていた。 烏丸「私の方に駆け出しましたよね、桃香さん。」 二夫「襲おうとしたのかよ、あんた…」 みちる「昔のヤンキーの血なんですかねぇ…馬鹿見たい。 (茜は嫌だけど…一郎さんに見捨てられる位なら、協力しようかな。 探偵さんの方に。)」
敷徳「貴文氏の方に向かう前に、茜さんに連絡を取るか。」 烏丸「私も連絡の確認をしたいので、ここで少し休みましょうか。」 烏丸と敷徳は少し離れ、二夫は桃香を見張っている。 桃香は気力が無い様子で黙り、みちるは烏丸の方を見ている。 敷徳が携帯の電源を付けると、茜からグレーの星形の花の写真が文面と共に送られてきた。 [こういう花、地下道にありました?] 敷徳は地下道で起きた様子を文面で返信すると、茜からすぐに連絡が来た。 茜「地下の事は把握しました。 こっちの方はワクチン接種の日程が、事件の影響から明日に変更になりました。 それと同時に…画面から不特定多数の誹謗中傷のコメントが流れ、兄はその内容に頭を抱え…」 敷徳「あの茜さんも大丈夫、元気なさそうだけど?」 敷徳が心配する中、何故か近くにはみちるがいて告げる。 みちる「まあ、この動画の配信元って闇サイト・ダークウェブ関係ですからね。」(編集済)
みちる「唯さんの祖父母は脅迫される形で、この家の鍵をシク村長に渡したと思うけど。 探偵さん、今カマをかけるつもりで、本当は唯さんの家族は共犯と思ってないでしょ?」 敷徳「ばれていましたか(共犯は斡旋者や施設の館長、シク村長に協力している村人と考えてはいるが。)」 みちるは小声で坦々と返答を続ける中、携帯から茜の声が聴こえる。 茜「みちる、私を閉じ込める前に烏丸先生は少し離れた所にいた。 実質閉じ込めたのはあなたと考えるけど、その理由は何?」 みちるは茜を見た瞬間、表情を曇らせて答えた。 みちる「理由は3つです。 一つ目はあの日あなた達が来なきゃ、あの動画で貴文の秘密及び動画配信者を知ることができた。 二つ目はグレーの星形の花が気づかれた際の、一郎さんを自分の物にできない事からの焦り。 三つ目は恵まれた家に引き取られ、村の不気味な名前に違和感を持たない。 そんな鈍感なあなたの全てが…元々大嫌いだから。」(編集済)
みちる「はぁ、貴文の秘密は唯さんへの偏執的な愛です。」 敷徳「偏執的な愛とは?」 みちる「貴文の初恋が唯さんで、当時6歳の貴文は事件の現場にもいたんですよ。 最近この動画を見ている時に、貴文が唯さんの写真を持って「愛している」って言って。」 その時、動画配信者と思われる人物からの返信があって…」 茜「それを見ている、あんたも気持ち悪いわね。」 みちる「あの茜さん、ふざけるのも大概にしてくれない?」 茜「どうしたの、お馬鹿さんと言われてから動揺している?」 みちる「うるさい…(茜の様子がおかしい、この探偵も急に笑い出すし…)」 みちるは怒りつつも、茜の変化にある焦りを見せている。 敷徳「(茜さん、地下道の返信の追記の通りに動いてくれているな。)」 茜「(敷徳さんが言うように、これで分かるのかな?) 部屋にあったグレーの星形の花は、地下道の村の花ではない。 烏丸先生の記憶障害を悪化させる物だという事を。」 敷徳「(そしてこの現状を見れば、動画配信者からのコメントも来るはず。)」 画面からコメントと思われる文面が流れた。 ?[あなた方は、貴文の仲間ですか?](編集済)
?【私と貴文はある取引をしました。】 茜「取引?」 ?【貴文は唯ちゃんを殺した犯人を知りたい。 あんたは薬品にも詳しいなら、伝染病のワクチンも知っているのでは? それを使えば、犯人は分かると。】 茜「伝染病と唯さんの関係性?」 ?【取引の条件として貴文には、それぞれの村に動画サイト用の監視カメラを設置して貰いました。 多額の金額を使いましたが、ワクチンを取り寄せることにも成功。 取引の代金は、既に頂いています。】 敷徳「伝染病、まさか貴文が言う犯人は。」 ?【貴文は真由子と紗矢のどちらかが、唯ちゃんを殺したのを見たと。 私に告げたんです。】(編集済)
?【色々考えられますけど、私にとってはそっちの真実はどうでもいいです。 私に取って、今気になるのはみちるさんです。 彼女はこの動画サイトのVIP会員ですが、現在の村の彼女の様子を見て不安だったので。】 茜「貴方も村の画像を見ているんですね。」 みちるは?の人物の登場から、寡黙で不安げな様子だった。 敷徳「烏丸家にあるPCは法人用の最新の物であり、一般家庭ではあまり使われない。 烏丸先生はPCで絵は制作しない、では使う人物は… みちるさんは配信者と繋がっているのではという仮説から、茜さんに挑発の指示を出しました。」 茜「あんたが感情的になれば、何か動きあるかと思って。 ただ正直に言えば私の本音は、怒りよりも悲しさの方が大きいんだよね…」 茜は悲しげに、みちるの方を見ていた。(編集済)
みちる「そこまで調べたんだ。 でも私は、シクトク村の事を忘れて欲しくて、私だけを見て欲しいだけだったから。」 茜「記憶が失う事は考えなかったの?」 みちる「分からないよ…ただ愛されたかっただけなのに。 一郎さんが真相を探る為に、当時裏社会にいた貴文や桃花、そして私に近づいた事は分かっている。 でも私はそれがきっかけで抜け出せた。 親に金で売られ、たらい回しにされた。 そんな私を一郎さんだけが、私を救ってくれた…たったの1人の愛する人を失いたくなかった…」 号泣する桃花に、茜と敷徳は呆然としていた。(編集済)
烏丸が、敷徳とみちるの方に向かう。 烏丸「話の内容は聴こえていたよ、動画配信者との繋がりと部屋の花か。」 烏丸はどこか悲しげに、みちるの方を見ている。 みちる「ごめんなさい…いや、謝っても許してくれないよね。」 烏丸「君のことについては、今はまだ気持ちの整理がつかない…すまない。」 みちる「一郎さん、何で謝るの…」 暗い雰囲気を漂わせる2人、一方で桃香は貴文の返信が無いことにうなだれ落ち込んでいた。 二夫「そろそろ貴文氏の方に行きたいけど…まだ難しそうですね。」 二夫の質問に敷徳も考え込んでいた。 原田「茜、烏丸先生の日記帳の整理できたよ。」 敷徳「あっ、原田さん体調の方は?」 原田「もう大丈夫だけど、何かあったの?」 敷徳は原田にこれまでのいきさつを説明した。 原田「そうか…あっ日記帳に勉強会の主催者の事が書かれていたよ。 顔を隠して声もボイスチェンジャーを使っていたが、身長はそんなに高くなかったって。」(編集済)
桃香「こんな幼女の写真を大事にして、あいつは本当の事を私には何も言わない。 嗚呼ムカつく、立場はこっちが上だったのに。」 みちる「落ち着きましょうね。」 敷徳が持っていた写真を放り捨て、叫びだし、また泣き出そうとする桃香をみちるは呆れつつなだめた。 敷徳は鍵を手にし、書物の中身を出した。 敷徳「さて書物を開けるとして、うん名前?」 本には著者として、[雨宮竜太郎・風祭与平]、そして損傷から読めない名前が明記されていた。」 みちる「雨宮竜太郎はシク村長、風祭与平は紅琥村の村長の名前です。」 二夫「この読めない名前は、どう解読しましょうか?」 貴文「おいお前ら、唯ちゃんの写真を取り外したやつは誰だ。 あと余所者、その書物は俺の物だ。」 怒号と共に貴文が敷徳達の前に現れた。 #シク村長と紅琥村村長に名前を付けました。あと桃香の名前間違い、気を付けます。(編集済)
本の中身を敷徳はメモしていた。 敷徳「書かれている内容は村の取引の状況や顧客リストに、民族的な村の歴史か。」 [花の汚染は広がってはいけない。 だからこそ片方の村には犠牲になって貰わなくてはならない。 それが先祖からの教え。]風祭与平 [その花売りが今では、その呪いを引き継いだ子供売りに変わるのも皮肉な話。 山中は逃げ出したが、あいつがいなくても私は続ける]正岡 二夫「山中は逃げ出した? そうなるとこの正岡というのは。」 敷徳「斡旋者でしょうね、ただ名前が消されている。 あれ烏丸さんからか、どうしたんだろう?」 烏丸「敷徳さん申し訳ない、今すぐワクチン接種の中止に向かってくれないか。 僕と同じ時にワクチンを打った女性達が、帰宅後に一時意識不明で倒れたという連絡が病院側から入った。 意識が戻っても、記憶が錯乱して自らを傷つける現況が起きている。」 #351さん、ありがとうございます。(編集済)
貴文「何なんだあの男は、ここは時間をおいて戻るべきか。」 みちる「話したいことあるけど、いい?」 みちるが貴文の前に現れる。 貴文「裏切り者が何のようだ。」 みちる「貴文さんは会っていますよね、配信者の人に。 取引って画面だけでできるの?」 貴文「何が言いたいんだ、お前は。」 みちる「一郎さんが、思い出しました。 勉強会の参加中、正岡と呼ばれていた人がいたって。 この書物にも記載されていた、正岡っていう人は配信者と関係ありますか?」(編集済)
敷徳「加奈さんですよね。 彼女が症状が出なかったことは、彼女と病院関係者から直接聴きましたので。 あの明日の午前中に、真由子さんと紗矢さんにお話を伺ってもよろしいでしょうか?」 病院関係者「ご家族の許可を取りたいので、少しお待ち下さい。」 電話の保留中、敷徳は考え込んでいた。 敷徳「加奈さんは注射後に手伝わせて欲しいと言って、原田さん達の方にいるけど大丈夫かな? あと貴文は金では動くけど、人を殺す度胸は無さそうではあるが…」 病院関係者「お待たせしました。 あのご家族の方からお話をしたい様ですが、よろしいですか?」 敷徳「はい、大丈夫です。」 雷太「敷徳さんですか…あの報告があります。」 どこか暗い口調の雷太に、敷徳は気にかける。 敷徳「何かあったのかな、無理しなくてもいいけど。」 雷太「いえ、俺も事件を解決したいんで…今は2人とも寝ています。 ただお袋は苛立っていて、最初俺を見て「誰?」と言ったり、貴文や館長には暴言を吐いてばかりで。 真由子おばさんは、終始唯ちゃんごめんなさい・加奈ごめんなさいと泣き叫び、自傷は止めてますが…」(編集済)
敷徳「加奈さん、体調が悪い時は休んでも構いません。」 あと質問があるのですが。」 加奈「記憶についてですよね。 まだあまり思い出せないのですが、一つ気になる事があって。」 敷徳「気になる事?」 加奈「注射から数十分後、ある事を思い出したんです。 それは私が子供の時で、女の人と一緒に村を散歩をして、勉強も教わりました。 女の人は顔や声はもやがあって分からなかったけど、とても温和で暖かく優しい人でした。 でも私は隔離されていて、勉強は父に教わったのに何で…」(編集済)
二夫「自宅というより、事務所みたいですね。」 加奈「時間をおいて、待ちましょうか?」 ?「あの、もしかして…」 アスリートを思わせる風貌の若い青年が、こちらの方を見て烏丸達の方に向かってくる。 原田「(正岡でないですよね。)」 烏丸「(体格からを見ると違いますが…)」 青年「あのスキーの原田さんですよね、良かった。 来なかったらどうしようと思って、依頼者の人にも連絡着かないし。」 原田「依頼者?」 青年「原田さんが俺の事務所に来たら、自分の友達だからこれを渡して欲しいって。 あっ俺、次の仕事があるのでこの辺で。」 青年は笑顔で、原田にシャイニーマスカットのジュースと手紙を渡して去っていった。 手紙の中身は[昨日の勉強会は、これを渡した代行業の方に出席して貰いました。 忘れてはいけない思い出の飲み物を添えて…]という文面が記載されていた。 烏丸「向こうの方が上手か、ただあの青年追いかければ間に合うかな。」(編集済)
熊野「いやこれは、烏丸先生どういう事ですか? 悪い冗談は辞めて下さい。」 烏丸「すみません、飲んでと言われた際の反応…」 熊野「何か隠しています?」 熊野は怪訝そうな表情で見つめ、烏丸・加奈・原田は申し訳ない様子で熊野を見ている。 二夫「あんなのいきなり渡されたら、動揺しますよ。」 敷徳「うん、ホッとしたけどやり過ぎたね。」 みちる「あの敷徳さん、どれだけ熊野刑事を疑っているんですか?」 二夫とみちるは、敷徳の事務所にいた。 外に出ているメンバーからの監視の許可は得ていて、通話も可能である。 敷徳「すまない、でもみちるさんも村の名前を変える納会の映像、見ていたんでしょ?」 みちる「その事は謝ります、でも事件が起きるとは思わなかったので。 ただ映像は直前までなら、アーカイブで見れますよ。 ジュースではなく、別の方法で毒殺された事も確認できるかと。」(編集済)
警察「バイクはレンタルバイクです。」 敷徳「レンタルバイクですか、分かりました。 ありがとうございます。」 敷徳「まあそうなるか、さて…」 そう言いながら、PCのモニター画面に敷徳は問いかける。 敷徳「そもそもこの事件は、僕らは誰かに誘導されているように思える。 例として烏丸先生と出会うきっかけは、どうやって生まれたのか? そこを考えた結果、僕はあえて問いかけます。 僕らを振り回して、そんなに楽しいですか? 僕はあなたの状況を探る為、熊さんが犯人だと言う嘘の仮説を語りました。 見てますよね、闇サイトの配信者であり勉強会の主催者の正岡さん… いや…一夫さんのパート先の同僚である柿沢牧子さん。」(編集済)
正岡[あなたは奇譚と呼ばれる物の筆跡と履歴書の人物は私だと思い込んでいる。 あと熊野刑事とのやり取りは、私を騙す為の寸劇…なめられた物ですね、私も。] 少し文面に怒りが見える中、敷徳は続ける。 敷徳「少し話を変えましょう。 アーカイブを見た推測ですが、針の椅子はあなたが勉強会で知り合った仲間に、外部の業者としての侵入を指示した。 理由は死因を混乱させる=実行犯を隠す為。 あと…この事務所の監視については…記憶が戻ってからだよね…加奈さん?」 敷徳は悲しげに、加奈の方を見つめ始めた。(編集済)
正岡[熊野刑事の次は、加奈さんですか。 以前貴文から貰ったシクトク病のリストの中に、彼女の名前がありましたね。] どこか庇うように見える形で、正岡は告げる。 敷徳「加奈さんが感染者としても、あなたの経由でワクチンを既に打っていた場合は? 海外の病院から無症状の人はいなかった報告は届いている…確率的に…」 正岡[いい加減にして、彼女は私とは無関係だと言ったはずよね…何がしたいの…] いつもの無感情ではない文面は、正岡の強い憤りが明白に表れていた。 加奈「ごめんなさい。 私は先生の為に…捜査を攪乱していました。 だって先生と亡くなった父だけなんです、小さな頃から私を見捨てなかったのは…」(編集済)
モニターが切り替わり、柿沢牧子の姿が見える。 柿沢「私の負けよ…ただ私が裏社会に関わっていたのは、教師になる前から… 一時は辞めたかったけど、それもできない状況となった。」 敷徳「話してくれるんですね…」 柿沢は温和な口調で語りだし、悲しげな表情を見せる。 柿沢「ただ話す場所は、シクトク村でお願いできませんか。 あなた方だけではなく、この事件に関わった人達が全員揃った形で…」 二夫「ふざけるな…蚊帳の外で見ていた、あんたの事なんて信用できるか。 動機は金か、それとも闇サイト関係か…」 二夫の怒りに柿沢は、表情を崩さず告げる。 柿沢「あなたが怒るのは…当たり前ですよね… ただ私の動機は…雨宮竜太郎と風祭与平に、自分の子供を殺された復讐。 父親が双子という理由だけでね。」(編集済)
柿沢「私は狂っている…それでいいじゃないかしら。」 どこか諦めにも似た形で告げる柿沢。 烏丸「あの、そもそも最初は子供は殺されたとしたら… この人は自分以外の子供を殺されない為に、子供を売ったとしたら?」 敷徳「烏丸さん?」 敷徳は烏丸の思いがけない言葉に驚いた。 烏丸「かばうわけじゃありません。 子供売りは許せない事です。 ただ父の発言で思い出したんです。 昔は子供売りよりも、非人道的な事が行われたと。」
熊野「もしもし、私だ。」 敷徳「熊さん、状況は? 熊野「自宅には凶器と思われる物というか何もない、柿沢牧子もいないよ。」 敷徳「えっ?」 室内の映像が、モニターから流れる。 そこには熊野と警察関係者がいて、中は整頓された空き家の状態だった。 柿沢「あっ私は、シクトク村にいます。 PCと仕事道具は持ち込む形で。」 そう言って柿沢は、外の風景と仕事道具を見せた。 二夫「元々そこにいたのか…」 二夫は怒りを通り越して、憔悴している部分もあった。 柿沢「私がここにいる理由は、ここで人殺しを探したいからです。 まあ雨宮殺しの犯人探しは、一番簡単だと思いますが。」(編集済)
事務所には烏丸、原田、熊野、茜、加奈も合流した。 加奈は敷徳達の方の離れた席に座り、うつむいて黙りこんだままだった。 みちる「(私が言うのも何だけど、彼女は信用できるのかしら?)」 二夫「(僕は信用できません。)」 茜「(柿沢の発言で、途中動揺している様にも見えたけど。)」 原田「(加奈さんの知っている事を、全て話してもらう事は難しいか。)」 一同が柿沢に気付かれないように話し合う中、敷徳は奇譚を読み込んでいた。 烏丸「(何か気になることでも。)」 敷徳「(改めて読み返した結果、二つの仮説が浮かんだんです。)」 熊野「(二つの仮説?)」 敷徳「(一つ目は柿沢牧子は山中すばるの恋人であり、山中が子供の父親だと言うこと。 そして二つ目はシク村長を殺した人物は、奥様である貴子さんの可能性が高い事です。)」(編集済)
敷徳「(二夫さんの話は事実で、間違いないと思われます。 一方で、以前彼女がこの事務所に来た時の話を思い出してください。 彼女は夫の入れ知恵という形で、村ぐるみでの薬物栽培を語っていました。 シク村長の視点で入れ知恵を伝える場合、自分の秘密を言いますか?)」 烏丸「(隠したい秘密ならば、言わないはず。)」 敷徳「(彼女も知っていたと思いますよ、花の栽培や子供売りの事を。 この事務所に来たのは、加奈さんの状況を探る為だと思います。 シク村長の事件前後の呪いにとらわれた発言も、演技だとしたら…)」(編集済)
加奈「私、ビジネスホテル借りますね。 GPSを付けても構いませんから。」 敷徳「加奈さん、あの…」 加奈「本当にごめんなさい」 何かを告げようとする敷徳をさえぎる形で、悲しげに加奈は立ち去った。 茜「家に泊まればと行ったんだけどね。 ただ加奈さん、何で女の先生って言ったんだろう?」 茜は部屋でPCを見ながら、考え込んでいた。 みちる「居づらいんじゃないんですか? 色々と。」 茜「うん、普通居づらいよね。 ただ、私はあんたに若干の恐怖を感じているけど。」 みちるも泊まる事がなく、話したい事がある理由から茜の家にいた。 茜「それで話したい事って何?」 みちる「正岡を紹介してくれた仲間です。写真見せますね。」 みちるは若い頃の写真を見せた。 茜「貴文は完全な組の人だね、桃香とあんたと…あれ?」 みちる「あっ貴文の隣にいる男が、正岡を紹介した人です。」 茜「山中タケル…何でこいつが貴文の隣にいるの?」(編集済)
茜「一人許可なく居座っている女もいるけど、家に泊まっていいよ。」 みちる「情報を与えたの私ですけど。」 加奈「すみません、ありがとうございます。」 みちるは夕飯として宅配ピザを頼み、茜は加奈に問いかける。 茜「あのさぁ…加奈さんって、敷徳さんの事好きでしょ。」 加奈「えっ?」 加奈は動揺して、持っていた飲み物をこぼす。 みちる「いきなり何ですか、その質問は?」 茜「いや、この暗く殺伐とした空気を和らげる為に…ごめん、マジでごめん。」 加奈「好きですよ…敷徳さんの事…私が人を愛する資格は無いですけど。」 茜・みちる「えっ?」 顔を赤く染める加奈と、呆然とする茜とみちる。(編集済)
茜「なるほどねぇ、でもちょっと意地悪な所あるよねあの人。」 加奈「そういう所も可愛いって…もういいですよね。」 顔を真っ赤にする加奈と、それを見てほほ笑む茜。 みちる「私は一目ぼれだったな、一郎さんなら私を助けてくれるかもって。」 茜「あっピザ屋来た、取りに行ってくるね。」 みちる「おーい」 3人が和やかに会話している中、敷徳は烏丸の呼び出しであるお店にいた。 敷徳「烏丸さんと二夫さんはあの席か。」 烏丸「敷徳さん、急な呼び出しで申し訳ありません。 原田さんと熊野さんも誘ったのですが、お忙しかったみたいで。」 敷徳「いえ、それで何かあったんですか?」 烏丸「山中スバルと山中タケルについてです。」 二夫「山中スバルがタケルの祖父ではなく、形式上では父親だった事ですよね。」 烏丸「記憶障害の影響とはいえ自分が情けなくなり、改めて山中タケルを調べ直したんです。 そこでセミナーに参加していた人達から、山中タケルがこの店の常連だと…うん?」 ?「さあセクシー&プリティーな山中ガールズ達、今日は僕のおごりだよ。」 女性達「はーいありがとう、タケルっち。」 ホステス風の女性達を連れて、山中タケルがお店に来た。 敷徳「(相変わらずの残念イケメンだ。)」(編集済)
二夫「何かのんきというか、完全に浮かれてますが。」 烏丸「裏社会の話を大勢の前で話せるものですかね?」 呆れた様子でタケルを眺める2人に、敷徳は動き出した。 敷徳「山中さん、お久しぶりです。 楽しそうな話は、僕も知りたいですね(正岡とか)?」 タケルだけに聞こえる様に、正岡の名前を出す瞬間、青ざめるタケル。 タケル「えーと…」 敷徳「あっ彼のマイフレンズの一人だから、同じフレンズ同士で話していいかな?」 女の子たち「あっ、大丈夫でぇーす。 プレゼントも貰いましたし。」 そう言って引っ張られる形のタケルを無視して、ご馳走を食べる女の子たち タケル「おい聴きたい事って、正岡って言う亡くなった親父の愛人か? 俺は金をくれる代わりに、人を集めていただけだからな。」 敷徳「(早いな…)」(編集済)
村に向かう車中。 二夫「柿沢という女は僕に同情したふりで、兄さんの情報は全く入ってこない。 もうウンザリだ、加奈という女も…」 原田「二夫君…」 二夫の昨日からのやり場のない怒りを考え込み、なだめる原田。 その様子を見て、烏丸はあることを告げる。 烏丸「敷徳さん、もう言った方が良いですよね。 二夫さんにはショックな事ですが…」 敷徳「そうですね…二夫さん。 ワクチン接種後、烏丸先生は一夫さんの過去を思い出したんです。 一夫さんが、裏社会で活動していた事を。」 (編集済)
二夫「俺は本当に知りたいだけなんです。 離れている間、兄さんがどういう生活を送っていて、どうしてあんな殺され方をされたのか。 その情報があまりにも少なすぎるんですよ、目撃者は敷徳さんだけ。 日々を重ねるごとに、兄さんの存在自体が消されている様に感じられて。」 二夫はこれまでの憤りから生まれた、辛い感情を爆発していた。 烏丸「二夫君…本当に私は役に立たないな。 入手し記録した情報も、ワクチン後によって改修前の情報だと気づく。 他にも思い出す過去は様々だが、この病によって大切な人達を裏切った事を思い出した。 今は後悔しかないよ、記憶が戻ってもね。」 烏丸の言葉の一つ一つは感情を抑えながらも、強い悲痛の想いを感じられた。 敷徳「全て終わらせましょう。 今日、奇譚の解読が終わると熊さんから聴きました。 それによって、僕とこの村の真実も知ることができるのですから…」(編集済)
敷徳「柿沢さん、パン工場であなたの事を聴いた時に文也さんにも会いました。 彼は二夫さんと連絡交換をしたのに、連絡ができないと嘆いていました。」 二夫「僕もあなたから聴きましたが、彼と同じ状況です。」 敷徳「だから文也さんについての証言も欲しいので、今からこちらに来て貰おうと思います。」 柿沢「彼は事件とは無関係よ、呼ぶのは辞めてくれないかしら。」 二夫「ならば兄の事件を、あなたの口から話してください…」 どこか表情が暗い様子の柿沢は、落ち着いた口調で語る。 柿沢「分かったわ…彼は私の家に来たけど、私は彼を殺してはいない。 彼を殺した犯人は、敷徳さん・二夫さん・原田さん・加奈…あなた達4人以外の中に…」 胸を抑えて倒れこむ柿沢を見て、別の車に乗っていた加奈が彼女の方に向かう。(編集済)
柿沢「彼は帰る前に言ったの、あの人に会いに行く…あなたとの決着はその後だって。」 二夫「会いに行く人物は、あんたにも分からないのか。」 柿沢「心当たりはあるわ、ただ」 柿沢が喋ろうとする時に、貴文・桃香・貴子・館長も広場に集まる。 貴文「敷徳さん、奇譚と父が関わった事件について話したいとはどういう事だ。」 貴文が疑問視を浮かべながら、敷徳に告げる。 敷徳「(あなたが呼んだんですか、僕の振りをして。)」 柿沢「(役者は全員揃えた方が良いでしょう、あなただって無関係の人も呼んでいるじゃない。)」 文也「あの警察の方から事情は聴きましたが、あれ二夫さんと柿沢さん何で?」 タケル「うわーすげー田舎。」 熊野「山中タケルも奇譚関係者だから、私が誘っておいた。」 疑問と驚きを見せる文也、状況を把握していないタケル、何故かドヤ顔の熊野も広場の方に来た。 敷徳「(山中タケルはリモートでという話を、熊さんには伝えたんだが…)」 柿沢「(あなたも大変ね…この場所だと狭いから移動した方が良いわね。 真由子さん・紗矢さん・雷太君のいる、大広間の方に)。」(編集済)
雷太「お袋、大丈夫か?」 紗矢「ええ大丈夫よ、いつもありがとうね雷太。」 真由子「ここで待っていてと言われたけど…」 ワクチン接種後に比べて、紗矢と真由子は落ち着いていた。 敷徳達も大広間に着き、紗矢達に挨拶をする。 桃香「(ねえタケルはともかく、あの男と女は誰?」 貴文「(さあ…あまりいい印象はないけどな。)」 女が貴文と桃香の方に向かう。 柿沢「お久しぶりですね、正岡です。」 貴文と桃香は青ざめた表情で、驚きを隠せない様子だった。 文也「(僕は役に立てるのだろうか? あれあの人どこかで…)」 文也はある人物の方に視線を向けていた。(編集済)