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敷徳「こんな所まで、つけてきたのか…おい何でいるんだ、あんたらも。」 熊野は黙ったまま敷徳を睨み、熊野の背後には敷徳の両親もいる。 敷徳「先生、こいつらを早く追い出して下さい。」 女医「他には、何が見えますか?」 敷徳「はっ、だから熊野とえっ…」 敷徳の回りには大樹が囲み、近くには加奈と彼女を狙おうとする刃が光った。 敷徳「加奈さん…何で…辞めてくれ…辞めろ!」 敷徳が叫んだ瞬間、彼の視界は白光に変わった。 室内にはヒーリング系の音楽が流れ、敷徳は寝ている体勢であった。 敷徳「あれ…ここは屋上じゃ、服も着ている…」 女医「敷徳さん…ここは屋上ではなく、心療用にお借りした仮眠室です。 敷徳さんは、今一時的な催眠状態でした。 そこで貴方が見た物は、現実の悩みが大樹の力によって具現化した幻覚です。」(編集済)
敷徳「まあ熊野に対しての、過剰なまでの怒りは無くなりましたけど…」 女医「精神面での大樹の治療は、荒療治の方が効果的な場合もあるので。」 敷徳「加奈さん達にも同じ様な治療を?」 女医「いえシクトク病の方は、別の形で行われるとだけ。」  敷徳「守秘義務ですよね(まあ、今は信じておくか。)」 敷徳が会釈をして部屋を出た後、女医はデータを確認する。 女医「(部屋を出たら知ると思うけど、治療を拒む人もいるのよね…)」
敷徳「あの、そもそもあなた方は精神面のケアで呼ばれたんですよね?」 ボブ「オフコース、でも力仕事には自信がありま~す。 現に先ほど敷徳さんがここに移動する途中、意思を失って倒れた時はここまで一人で運んだほどで~す。」 敷徳「(気絶していたから、ここまで来れた訳か。)」 廊下でボブがハイテンションで語る中、女医が2人の方に向かう。 女医「ボブ、ここでは静かにしてと言われたでしょ?」 ボブ「すみませ~ん先生、あとシクトク病の方々が心療に恐怖を抱いているのどうにかなりませんかね~」 そう言ってボブは敷徳の方を子供のような目線で凝視している。 ボブ「説得のお願いをできませんか、敷徳さん?」(編集済)
ボブ「大和魂、坂本龍馬の精神の覚悟じゃけ~ん!」 敷徳「龍馬は土佐だろう!…あの何ですかこれ?」 ボブ「楽しませる為の、前座の漫才ですよ。」 2人は待ち合わせ室の前で、会話をしていた。 敷徳「駄目ですよこんなの、烏丸がキレる場合もありますよ?」 ボブ「まあそもそも個別の心療なので、皆さんはここではなく個室にいますが。」 敷徳「すみません、推理を練り直してきます。」 ボブ「帰らないで下さい、これはジョークですよ。 実は敷徳さんと心療前に話がしたいという、女性の方がいるんですよね。 二人っきりで話が出来ないと心療はと…」 敷徳は帰ろうとする足を止めた。 敷徳「(誰だ…加奈さんとは話はしたいが…)その部屋に行けば良いんですね。 ボブは笑顔でうなずき、敷徳はボブの案内で部屋に入る。 紗矢「お久しぶりです、今回お詫びとお話したい事があるので…あの怒ってます?」(編集済)
紗矢「あの男が父親ではない事は、正直に言えばホッとしています。」 敷徳「そうですか…あの雷太君の父親候補の中で、烏丸は違いますよね。 雷太君はシクトク病では無いですから。」 紗矢「そうですね…父親は貴文か正造のどちらかだと思われます。」  敷徳「どちらか?」 敷徳は紗矢の返答に、困惑を浮かべるがその表情から嘘には見えなかった。 紗矢「館長以外にその2人の相手も…半ば強制的に受けました。 でも記憶障害を演じた罰から、それに関する記憶が混沌としているんです。 自分が本当に情けないです…治療しても良い結果になるのか… 村側の仲間だとしたら…雷太や真由子は私を赦してくれない…」(編集済)
紗矢「いつかは分かる事だから、その覚悟は持っています。」 敷徳「紗矢さんひとつ質問があるのですが… 今の烏丸について、紗矢さんの視点ではどう見ていますか?」 紗矢は深く考え込みながらも、質問に答えた。 紗矢「資料を見るまでは、私達と会っていた時と変わった印象を受けました。 大広間では一人二役の芝居を見ているようでしたけど… 敷徳「資料で烏丸が二重人格であり、【カラス】の事は知っていますよね。」 紗矢「はい…でも今、烏丸さん自身がとても苦しんでいるようにも思えるんです。 自分自身の記憶の混沌からの怒りと嘆きが感じられ…でもそれも演技なら…」(編集済)
ボブ「そもそも有名な医療機関が開発した物ですよ、信用出来ないのですか~? 政府の医療機関のHPに、ワクチンの成分があるので調べて下さ~い。」 敷徳「成分は本当か(まあ、成分はおとりだが…)」 ボブ「それに山中組を陰で牛耳っているのは貴文さんでしょ? 亡くなった山中スバルさんの代わりに、裏の組長として活動をしているですから~。」 敷徳「亡くなったって、それ初めて聞くのだが…」 敷徳と紗矢はボブの発言に強い疑念の視線を浮かべ、ボブはそれを察したのか語り始めた。 ボブ?「はぁ降参だ…本物のボブはロッカーに監禁したが命は無事だ…変装も解くとしよう。」 金髪のカツラとカラーコンタクトを外し、顔の特殊メイクを外し始める男に敷徳は気づく。 敷徳「あんた、忍者ショーで敵の播魔役をしていた(だとすると月本とこの男は…)」 播魔「あの時の客の1人か、ばれないと思っていたけどな(まあ、ここまではボスの想定内か。)」(編集済)
敷徳「きな臭い噂か、こちらとしてはあんたの仲間の方が気になるのだが?」 紗矢「仲間って…」 敷徳「僕の催眠療法の時、気になる所があったんです。 間違った記憶を追い出したならば、矛盾している箇所がある。 加奈さんが襲われた場面、これが間違った記憶の理由…いるのは分かっているんですよ女医さん。」 ドアが開ける瞬間の音から、女医の姿が見える。 女医「あなたへの治療は本物よ、ただある方からあなたへの洗脳の指示も受けたわ。 まあ私以外の医療関係者は、今シクトク病の方々の精神面の治療をしているから安心して… 私だけよ悪に染まったのは、子供の心臓移植の医療費でね…播磨さん、もう全て話しましょう。」 播磨「(ボスを裏切るのか…このアマが…)」 女医は播磨とは違って笑わず、播磨は女医を強く睨んだ。(編集済)
播磨「・・・・・はぁ、甘く見るんじゃねえよ。」 女医「そんなには、うまくはいかないわよね…」 播磨はすぐに立ち上がり、血と思われたのは芝居用の血のりだった。 播磨「首の部分の特殊メイクが役に立ったか…ボスに感謝しないと。 まあ、ボスから足止めを頼まれた人物の治療は行われる時間になるけどな…」 敷徳「ボスって…指示しているのは誰なんだ?」 女医「柿沢牧子よ…あの女が全ての黒幕よ。」 播磨「はっ?ボスは、貴文さんだろ…」 女医と播磨はお互いの発言に、強い疑念の表情を互いに浮かべた。 敷徳「どういう事だ…(だとすると烏丸か、いや待て…何だこの胸騒ぎは。)」 紗矢「次の順番って…確か…」 治療室の方では精神科医が、シクトク病患者に問いかける。 精神科医「では精神面の治療を始めますが、よろしいですか…雪村加奈さん?」 そう告げられた加奈は微笑みながら、頷いた。
敷徳はすぐに取り押さえるの辞め、精神科医と加奈に語る。 敷徳「乱暴な真似をした事は謝罪します、ただ治療前に彼女と話がしたいだけなんだ。」 精神科医「そう言われてもな…」 加奈「私はいいですよ、私も治療前に敷徳さんと話がしたかったですから。」 別室では播磨と女医を、男性警部と老警部が囲む形で見張っていた。 播磨「おい貴文さんを呼んでくれ、話したい事が…」 男性警部「貴文は月本と共にいなくなった、こっちとしてはその辺の関係性を教えて欲しいけどな。」 老警部「この部屋に私達を呼び出したのはあなたか、あとボブ君は無事だったよ。」 女医「そう良かったわ、でも牧子でもなさそうですね…私達の指示者は。」 男性警部「おい何が言いたい…そもそもあんたがやった治療法は本当なのか?」 女医「本物です…ただ敷徳さんにだけは、間違った判断をしないで欲しいと言う願いから忠告も加えました。 私が接した牧子の行動を考えたのですが、彼女には誰かを守る印象も受けました。 牧子が守りたい人…シクトク病関係者の中から考えると一人しかいないですよね?」(編集済)
加奈と敷徳は精神科医達の監視の元、話をしていた。 加奈「私について聴きたい事はなんですか?」 敷徳「まず、あなたが既に身体面でのワクチンを接種していた事です。 問題は誰がその指示をしたか、僕はそれを決めたのは…烏丸自身だと思う。」 加奈は表情を崩さぬまま敷徳を見つめ、敷徳は話を続ける。 敷徳「【水曜日の僕】、【カラス】どちらとも君との接触は少なかった。 この行動がどちらも君を守る為だとしたら、ワクチンを入手した時に自分よりも優先する可能性が高い。 【カラス】は正造との関係性も考えられるが、その行動はあいつを騙す為の行動にも見える。 加奈さんが自分に近づくと危ないから、あえて接触はしなかった。」 加奈「でも牧子先生が決めた可能性が一番大きいのでは?」 敷徳「いえ、どちらの人格も牧子は裏切ると考える辺り、牧子には決定権を渡さないと思います。 ならば…どちらの人格にも味方する事が可能であり、この村への恨みが強い人物… 2人がかりとはいえ大柄な播磨を捉えられる事って、普通だと難しいですよね…紗矢さん?」 敷徳は精神科医達の近くにいる紗矢を見つめ、紗矢は冷酷な眼差しで敷徳と加奈を見ていた。(編集済)
敷徳「僕が気になったのはそこではなく、捕らえられた後の播磨の行動です。 播磨は女医の方に、怒りから飛びかかろうとしました。 あの動きができるのなら、播磨はその前に僕達を狙う事もできるはずです。」 彼は心療の足止めを命令された為、行動に移さずに会話で時間稼ぎをした。」 加奈「紗矢さんそろそろ終わりますよ…烏丸の心療。 きっとあの男は罪の意識に発狂して…だから私達の勝ちですね。」 敷徳「加奈さん?」 敷徳が話している途中、加奈のこれまで見たことの無い表情や声に戸惑い始めた。 加奈「心療は同時進行ですよ…あと私のアリバイを信じてどうするんですか? 敷徳さんいや太郎さんって本当可愛いですね、愛しい人…」(編集済)
ここは別の診療室。 烏丸「早く心療をしたいのだが、何故君がここにいる?」 みちる「敷徳さんからあなたが心配だから、心療前に話をしてくれって。」 眼鏡刑事「あなたが暴走した際の見張りとして、私と平田さんもいますがね。」 烏丸「俺なんて見捨てても構わないよ、罪も償う覚悟だ。」 平田「烏丸さん、だからこそあなたには見て欲しいんだよ。」 平田が机上に乗せたのは【カラス】の映像のフラッシュメモリーと日記だった。
眼鏡刑事「烏丸さん、精神科医の方もいらっしゃいますから。」 男性の精神科医が、烏丸を見て会釈する。 烏丸「見ても意味は無いと思うけどな…」 精神科医「では、まずこちらを見て下さい。」 モニターから映像が映し出される、カラスと仮面を身に着けた人物が話をしていた。 ?【みちるさんはあなたが育てて下さい、私達の仲間は多いに越したことはないので。】 カラス【加奈と一緒では無いんですか?】 ?【あの子は正岡の血を受け継いだ数少ない生き残りであり、大事な器ですから。】 カラス【器として見ているのですか…】 カラスはどこか憤りを浮かべた表情を見せ、仮面の人物の近くには牧子がいた。 牧子【加奈の面倒は私が見ます…あの子は私に取って宝…】 ?【牧子さん、自分の立場を弁えて下さい…あなたは一度裏切ったんですから。 さて…烏丸さんの実験を始めましょうか。】(編集済)
?【ここにいる者達は、烏丸以外はみんな耐性ができていますが…以後気を付けて。 こちらの方も敵対関係になるならば、主人格はこちら側の人間になって貰わないと。】 ?はそう言ってささやきながら、正岡の秘術と思われる催眠を烏丸に仕掛けた。 精神科医「音楽の方は事前作業の際に、音量をoffにした状態で加工させてありますので。」 平田「烏丸さん自身が洗脳されて、【カラス】になったのか(間違った判断をしてしまったな…)」 眼鏡刑事「きっとこの仮面は月本です、月本を早く見つけないと!」 烏丸「違う…仮面は…あの若い男じゃない…仮面の奴は…」 みちる「一郎さん…(私は何も分かっていなかった…ごめんなさい。)」 モニターからある人物の姿が見える。 ?【加奈ちゃんを寝かしつけました、ああ上手くできた見たいですね。】 ?【そうですかご苦労様…月本君、私は身を清めてきますので。】 月本【それにしても僕らに対して否定的ですね主人格も…ボスもご苦労様です、あっ睨まないで下さいよ。】 仮面の人物は部屋の近くのシャワールームに向かう、30分後着替えが終わった紗矢が出てきた。(編集済)
紗矢「それで、加奈の様子は。」 月本「相変わらずですよ…」 そう言って月本は庭先の方を見つめ、その庭には無数の小さなお墓があった。 月本「紗矢さんは起きないんですか、衝動?」 紗矢「私には真由子や雷太という支えがいるから…」 月本「俺は親ですね…まあ衝動が爆発しそうになったことはありますが。」 牧子「どんな教育をしても加奈は変わらない…お前さえ余計なことをしなきゃ。」 そう言いながら、牧子はお墓にある物を埋めながら、庭先にいる人物を睨む。 ?「俺のせいか…だけどもう止められないだろう…加奈の衝動は。 正岡の歴史をいたずら半分で見せただけで…ここまでになるとは。 まあ血筋や、加奈の支えになれなかったお前らにも問題はあるけどな。」 紗矢「相変わらずね…それとも元凶を作ったとしてボスと呼ぶわよ…貴文さん。」 そう皮肉交じりに笑いながら語る、紗矢の目は笑っていなかった。
貴文【ボスって俺達の関係に上も下もないだろ、まあ牧子は下だけど。 それにしても、村近くの立ち入り禁止区域にこんな屋敷があるとは… 正岡もいい物を残してくれたもんだ。】 月本【あの呼び捨てしないでくれますか…本当に苛立たせるなあんたって。】 貴文【なら殺せよ、俺は早く終わらせたいだけだから自分の人生を。 そもそもあんな両親の時点で…】 紗矢【(両親ね…本当に哀れな人)うん、あれって?】 紗矢はカメラの近くに向かい、月本もその後を追う。 月本【小型カメラですね、烏丸が仕掛けたのか? あの面白い事が浮かんだのですが… 加奈ちゃんの動物への衝動を、これで撮影して烏丸に見せましょうか?】(編集済)