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敷徳は稼いだ10万円でシクトク村へ向かう前日、夢を見た。
(婚約者おったんかい、罪な男よの〜)
今年の夏は特に暑く、もう秋だというのに都会の残暑はひどかった。
だがシクトク村の風は違った。
一足お先に秋を迎え、心地良い風が頬をなでるのを感じながら二人は歩き出した。
紅葉の幹をなでながら、安堵の声を漏らした。
二人は予約していた温泉宿へ向かうことにした。
「おー待ーちーしーてーおーりーまーしーたー」
ミシミシ音のする廊下を女将に促され部屋へ。
窓からは、あの木が見えた・・・そう、あの紅葉の木。
葉の色はわずかに色づいていた。
熊野「10年前の正造ベーコン事件のことなら私も存じております」
村長「あれは迷宮入りじゃ、他に何か事件が?」
敷徳「ええ・・・」
曖昧な返事をした敷徳は露天風呂から空を見上げた。
敷徳「うええ・・・」
村長「うおおっ、あれはまぼろしのシクトク鳥じゃ。」
熊野「加奈さんは、こちらの宿で働かれているのですか?」
加奈「ええ。」
敷徳「正造さんは村でたった一人の専業主夫と聞いておりますが、お母様は・・・?」
加奈「この宿の女将でございます」
原田「ふたお〜」
電話から原田の心配そうな声が聞き漏れてきた。
井上二夫と原田がシクトク村に到着したのは、
丁度「シクトク祭」の真っ最中だった。
その時、二夫は小さいころの記憶が鮮やかによみがえった。
艶々の飴のかかった林檎を頬張る、自分。
いや、それは自分と同じ顔をした兄の一夫だった。
「シクトク林檎飴、おいしいね〜」
口の周りを真っ赤にした一夫が言った。
そして音楽が聞こえて来た。
シックトック シックトック シックトック祭り〜(あっそーれ♪)
シックトック シックトック シックトック踊り〜(よいっしょ♪)
村人たちは血塗られの木の周りを反時計回りにぐるぐると回り、踊りはじめた。
ピ〜ンポ〜ン〜♪
キャンキャン、ワオーン、バウバウ、
チャイムの音と共に、犬らしき鳴き声が響いた
シクトク村の山の反対側に鏡合わせのような村、クトクシ村があった・・・
クトクシ村にたった一軒の宿の女将は最近「今日あそこで買い物してたでしょー」など身に覚えの無いことを言われることがあった
シックトック シックトック シックトック祭り〜(あっそーれ♪)
シックトック シックトック シックトック踊り〜(よいっしょ♪)
シクトク村の住民たちは反時計回りに回り出した。
・・・・とその時、「も・も・もう我慢できない〜」
クッシトック クッシトック クッシトック祭り〜(あっそーれ♪)
クッシトック クッシトック クッシトック踊り〜(よいっしょ♪)
紅琥村の住民たちは時計回りに回りだした。