NTMyN:15
敷徳は稼いだ10万円でシクトク村へ向かう前日、夢を見た。
(婚約者おったんかい、罪な男よの〜)
今年の夏は特に暑く、もう秋だというのに都会の残暑はひどかった。 だがシクトク村の風は違った。 一足お先に秋を迎え、心地良い風が頬をなでるのを感じながら二人は歩き出した。
紅葉の幹をなでながら、安堵の声を漏らした。 二人は予約していた温泉宿へ向かうことにした。 「おー待ーちーしーてーおーりーまーしーたー」
ミシミシ音のする廊下を女将に促され部屋へ。 窓からは、あの木が見えた・・・そう、あの紅葉の木。 葉の色はわずかに色づいていた。
熊野「10年前の正造ベーコン事件のことなら私も存じております」 村長「あれは迷宮入りじゃ、他に何か事件が?」 敷徳「ええ・・・」 曖昧な返事をした敷徳は露天風呂から空を見上げた。
敷徳「うええ・・・」 村長「うおおっ、あれはまぼろしのシクトク鳥じゃ。」
熊野「加奈さんは、こちらの宿で働かれているのですか?」 加奈「ええ。」 敷徳「正造さんは村でたった一人の専業主夫と聞いておりますが、お母様は・・・?」 加奈「この宿の女将でございます」
原田「ふたお〜」 電話から原田の心配そうな声が聞き漏れてきた。
井上二夫と原田がシクトク村に到着したのは、 丁度「シクトク祭」の真っ最中だった。
その時、二夫は小さいころの記憶が鮮やかによみがえった。 艶々の飴のかかった林檎を頬張る、自分。 いや、それは自分と同じ顔をした兄の一夫だった。 「シクトク林檎飴、おいしいね〜」 口の周りを真っ赤にした一夫が言った。
そして音楽が聞こえて来た。 シックトック シックトック シックトック祭り〜(あっそーれ♪) シックトック シックトック シックトック踊り〜(よいっしょ♪) 村人たちは血塗られの木の周りを反時計回りにぐるぐると回り、踊りはじめた。
ピ〜ンポ〜ン〜♪ キャンキャン、ワオーン、バウバウ、 チャイムの音と共に、犬らしき鳴き声が響いた
シクトク村の山の反対側に鏡合わせのような村、クトクシ村があった・・・ クトクシ村にたった一軒の宿の女将は最近「今日あそこで買い物してたでしょー」など身に覚えの無いことを言われることがあった
シックトック シックトック シックトック祭り〜(あっそーれ♪) シックトック シックトック シックトック踊り〜(よいっしょ♪) シクトク村の住民たちは反時計回りに回り出した。 ・・・・とその時、「も・も・もう我慢できない〜」 クッシトック クッシトック クッシトック祭り〜(あっそーれ♪) クッシトック クッシトック クッシトック踊り〜(よいっしょ♪) 紅琥村の住民たちは時計回りに回りだした。