こんな記事を見つけました
「ジェンダーレストイレ」や「誰でもトイレ」など性別にかかわらず使えるトイレの設置が広がっています。
ただ、女性専用ではないことに不安の声もあがり、設置者が改修を決めた施設も。
「日本トイレ研究所」代表理事の加藤篤さんは、多様性に配慮したこれらのトイレが、
逆に「選択肢を狭められた」と多くの人に思わせてしまったのでは、と指摘します。
4月に東京・新宿に開業した東急の複合施設「歌舞伎町タワー」。
2階のトイレには女性用(2室)、男性用(2室)、ジェンダーレス(8室)が同じ空間に並ぶトイレができた。
しかし、SNS上では「トランスジェンダーへの配慮で女性専用トイレがなくなった」「性犯罪の温床になる」といった書き込みが多くあった。
今後、改修工事をするという。
渋谷区が設置した公衆トイレにも批判が。
女性専用の個室をなくし、男性用の小便器と共用トイレ(2室)に改修したためだ。
加藤篤さんは、歌舞伎町タワーや渋谷区の公衆トイレについて、「多様性への配慮が欠けていた」とみる。
「多様性とは、本来、様々な選択ができる環境があること。
しかし、今回は女性用個室をなくしたり、ジェンダーレストイレを多く設けたりしたことで選択肢が狭められたようにうつってしまい、逆に『使いづらい』と感じさせてしまったのでは」と話す。
特に歌舞伎町タワーの場合は、男女別のトイレがあっても、入り口や手洗い部分が男女共用になっており、
「犯罪防止を徹底する構造になっておらず、不安や危険を感じさせてしまった」。
また、「オールジェンダー」や「ジェンダーレス」という新しい概念への説明が不十分なまま、多くの人が使う場所に登場したことも「不安と混乱を招いた」と分析する。
「人はよく知らないことに、不安や嫌悪感を感じる。
特に、みんなが毎日使い、強く習慣化しているトイレという場所に新しい概念を導入するには、丁寧な説明や社会実験などのスモールステップの積み重ねが必要だったのでは」
加藤さんによると、バリアフリーのトイレは、車椅子利用者やオストメイト(人工肛門などを使う人)、
子ども連れなど、様々な人に対応するために多機能化していった歴史がある。
ただ、一つのトイレに機能が集中することで混雑してきたため、最近では、「車椅子用」「オストメイト用」など、
機能分散が推奨されるようになった。
その流れで「オールジェンダートイレ」や「ジェンダーレストイレ」も生まれた、とみる。
「そもそも、性別に関係なく使えるトイレを必要としているのは、トランスジェンダーの人たちだけではない。
異性の子どもやお年寄りなどに付きそう人にとっても必要な存在だ」と加藤さん。
「トランスジェンダーの人たちだけの問題とされ、対立をあおるような議論になることは避けなければなりません」
とも指摘。
「トランスジェンダーも、そうでない人も、よりよいトイレの在り方を考える仲間。
一緒にこれからの社会にふさわしいトイレ環境をつくる必要がある」と語る。