飲食店などで撮影された迷惑行為の動画が拡散し、インターネット上で炎上する事態が相次いでいる。
飲食店側は「毅然とした対処」をするなどと明言している。
弁護士ドットコムは、会員の弁護士に迷惑行為への企業の対応についてのアンケート(実施期間:2023年2月8日~10日)を実施し、100人から回答が寄せられた。
被害にあったスシローでは、客側からの謝罪を受けた後も「刑事、民事の両面から厳正に対処」すると発表した。
これに対して、9割近くの弁護士が「賛成」「やや賛成」と回答し、企業側の対応を支持していることがわかった。
回答した弁護士からは「メディアがことさらに騒ぎ立てることには感心しない」「ネットリンチが苛烈すぎる」など、迷惑行為をした人だけではなく、
報道や世の中の反応について疑問視するコメントも寄せられた。
「本来であれば、学校教育や家庭教育でインターネットの影響の大きさを伝えるべき」など、教育や啓発の必要性を訴える意見もみられた。
●「責任追及したことを発信し、今後の防止につながる」
スシローでは2023年1月、醤油ボトルの注ぎ口や湯呑みをなめてそのまま元の場所に戻すなどの迷惑行為をする客の動画が拡散され、株価が下落した。
企業側は被害届を出し、岐阜県警が偽計業務妨害の疑いで捜査していることが報じられている。
迷惑行為をした人に民事責任も問う方針だ。
このようなスシローの対応について、弁護士に考えを尋ねたところ、もっとも多かったのは「賛成」(72%)との回答だった。
「やや賛成」(17%)とあわせて、約9割が企業側の対応を支持していることになる。
「どちらとも言えない」が9%で、「反対」「やや反対」はそれぞれ1%にとどまった
「賛成」と回答した弁護士からは「保護者の責任も検討すべき。損害額はかなり莫大で、加害者側は破産することになると思うが、責任追及したことを社会に発信し、
同種犯を防止することができると思う」など、予防の観点からのコメントも寄せられた。
一方、「民事でも相手に支払い能力がなく、刑事でも警察検察が重い処分を下すとは思えない。
厳正対処をうたっても実行可能性が乏しいため、むしろ美談づくりに利用したほうが企業イメージ向上につながるのでは」としたうえで「反対」を選択した弁護士もいた。
●客による迷惑行為全般についても同様の傾向
今回のスシローの件に限らず、客による迷惑行為(明らかな犯罪行為を除く)がネットで公開され、炎上した場合、
企業はどう対応すべきだと思うかと尋ねると「刑事、民事双方で責任を追及すべき」との回答がもっとも多く、82%となった。
「民事責任を追及すべき」(5%)、「刑事責任を追及すべき」(2%)と合わせると、約9割が法的責任の追及を望ましいと考えていることがわかった。
「穏当な解決を目指すべき」は10%、「無視した方がよい」は1%にとどまった。
ただ、法的責任を追及するにせよ、「迷惑客の今後の生活・人生を考えた対応をすることにより、消費者からの支持が高まる余地もあると思うので、
いろいろな対策をシミュレーションすることも必要だと思う」など、迷惑行為をした人への一定の配慮を求める指摘もみられた。
●「大きく取り上げるのは逆効果」「精神的に追い詰めてしまう」の声も
動画が拡散して炎上するたびに、大手を含むメディアが報じた。ネット上では迷惑行為をした人物の個人情報を晒したり、非難したりする動きもみられた。
スシローで迷惑行為をした客は通っている高校を特定され、自主退学に追い込まれたと報じられている。
「こうした行為が加害者の未来を破壊するものであるということを強く自覚させるためにも、世の中の反応が厳しくあることはむしろ望ましいと思う」とする意見もある一方で、
個人への攻撃を問題視するコメントも複数みられた。
「直接の被害者とは無関係の人間たちが、迷惑行為をおこなった者をこぞって攻撃することは、加害者を精神的に追い詰めることとなり、
場合によっては自殺にまで追い込む可能性がある。
企業としては『当事者同士の問題であり、これ以上の報道や無関係の人間による誹謗中傷はやめて下さい』旨の発表をすべき」
メディアに対しても「報じる必要はなく、ネットと同じようにイナゴになる必要はない。
火に油を注ぐだけ」「大きく取り上げるのは愉快犯に対して逆効果」などの指摘もみられた。
回転ずしチェーンを中心とした飲食店で、利用客による悪質な迷惑行為を収めた動画がSNSで拡散した問題。
被害を受けた各企業が毅然とした対応を示すなか、新たな動きがあった。
© 女性自身
3月8日、名古屋市内の「くら寿司」で迷惑行為の動画撮影をした住所不定・無職の吉野凌雅容疑者(21)や少年ら3名が、威力業務妨害容疑で愛知県警に逮捕されたのだ。
動画撮影が行われたのは2月3日夜。
吉野容疑者がレーンを流れる寿司を手づかみで直接食べ、卓上に設置された醤油さしを口に含んで笑みを浮かべる。
この“ペロペロ動画”を撮影したのは、ともに逮捕された19歳の少年と見られており、15歳の少女も一緒にいたという。
こうした迷惑行為における逮捕は全国初となる。
「くら寿司」は《今回の逮捕をきっかけに、こうした、お客さまとの信頼関係に基づく仕組みを、根底から揺るがす迷惑行為が「犯罪」であるということが、広く世の中に認知され、今後、模倣犯がなくなることを切に願います》と、公式サイトを通じてコメントしている。
「吉野容疑者の動画が投稿されたのは、『スシロー』で少年が醤油さしや湯飲みを舐めまわすといった動画が拡散された直後です。
テレビでも頻繁に取り上げられていたので、話題に乗じて悪ふざけのつもりでマネをしたのでしょう。
吉野容疑者は謝罪動画を投稿していましたが、半笑いで反省の色はまったく見られませんでした。
一方、被害を受けた店側は、清掃業務や問い合わせ電話の対応に追われました。
くら寿司は警察に被害届を出し、カメラシステムなどを活用して犯人を特定したといいます」(社会部記者)
警察は容疑者3名の認否を明らかにしていないが、一部メディアでは吉野容疑者が逮捕直前に、SNSで《僕は捕まりましぇーん》などと投稿していたことも報じられている。
しかし、無反省な数々の行動によって、重い代償を背負うことになりそうだ。
「くら寿司といえば、2019年2月にもアルバイト2名による“悪ふざけ動画”がTwitterで拡散したことがありました。
アルバイトたちは解雇され、刑事・民事の法的措置がとられたといいます。
今回も同様に刑事罰だけでなく、吉野容疑者らが損害賠償金を請求される可能性は高いでしょう。
過去の事例から、“1000万円以上請求される可能性がある”と指摘する専門家もいます。
ネットで拡散した動画は、削除しても半永久的に残るといわれています。
吉野容疑者はすでに顔が公開されていますし、逮捕によって実名も報じられました。
賠償金を請求された場合、返済のために就職する必要も今後出てくるかもしれません。
しかし、顔や名前が知れ渡ってしまったことで、勤め先を見つけるのも一苦労するでしょう」(社会部記者)
自らが起こした行為を「犯罪」と認識し、罪を償うことはできるだろうか。
迷惑以外の何物でもありません!